「バリュー投資」を実例(大平洋金属 5541)で学ぶ

前回「ファンダメンタル分析「バリュー投資」の入門」をまとめた。

簡単に説明すると、次のようなスクリーニングが「バリュー投資」の一歩とのこと。

  1. 株価から「グレアムのミックス係数」を確認
  2. 決算短信で「ネットネット株」か確認
  3. 「有価証券報告書」で「キャッシュフロー」を確認
  4. 「エクセル」を開いて必要な数字をコピペして計算

まずは教科書どおりにやってみる。

「大平洋金属(株) 5541」がバリュー投資対象か確認する

「うねり投資」を勉強して、2018/10/25に「大平洋金属(株) 5541」を「3,319円」で購入した。

「うねり投資」を理解した”つもり”でスクリーニングした株だけど、なぜ このタイミングで「買い」で入ったのか・・・・。

そして結局、帰宅すると倒れるように寝て、出社中は朝イチの会議の資料作成していて損切りタイミングも逃した。

で、現在「2,215円」。

今後どうすれば良いか迷っているので「バリュー投資」の観点で「割安」なのか調べてみる。

【自分の根拠】今は底だから買い増し!

過去の株価より「2,000円」が底。

根拠なく後は上がるだけと考えているので買い!

【自分の根拠】株主に優秀な投資家がいるから買い増し!

「株主に優秀な投資家がいたら買い」というのが一つの理由。

「大平洋金属(株) 5541」の株主を見てみると、「BBHフィデリティイントンシックオポチュニティズ」が存在する。

日本トラスティ信託口9 256(13.0)
新日鐵住金ステンレス 204(10.4)
日本マスター信託口 162 (8.2)
三菱商事 159 (8.1)
日新製鋼 149 (7.6)
BBHフィデリティイントリンシックオポチュニティズ 102 (5.2)
・・・

このファンドは、ジョエル・ティリングハストのバリュー株ファンド。

このファンドは世界中のバリュー株に投資し、年率10%以上の高収益を誇ってる。

そんなファンドが株を保有しているし、過去最低レベルの株価なら「買い」でしょ!

「バリュー投資」を考えてみる

要するに自分では「安値」と思い込んでいるので、実際にバリュー投資の観点から「買い」なのか考えてみる。

「バリュー投資家」の一般的な手法

簡単に一覧にしてみました。

指標まとめ 具体的な数値
PBR 1以下(含み資産を入れたPBRが必要)
グレアムのミックス係数 PBR×PER=11.25以下 (グレアムの22.5の半分以下)
5以下はパフォーマンス良い
2以下はバリュートラップ
時価総額 300億以下(30,000百万円:機関投資家が買わない額。かぶ1000氏は200億円以下)
売上 少しずつ伸びていて年率20%前後、営業利率が10%より少し低め(機関投資家より少し低い)
自己資本比率 自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)。30~40%が安全(目指すは 40%、赤字企業 -4%、黒字企業 25%、優良企業 53%)
ネットネット株(グレアム式) ネットネット株=(流動資産-総負債)×66.7%>時価総額
ネットネット株(かぶ1000式) ネットネット株=(在庫評価額を除いた正味流動資産)+投資有価証券ー貸倒引当金ー負債合計>時価総額
ルックスルー利益 = 一株あたり純利益(EPS)× 保有株数
ルックスルー資産(かぶ1000式) = (一株あたり純利益(EPS)+ 一株あたり含み益)× 保有株数
EV/EBITDA倍率 =(株価×発行済株式数+有利子負債ー現預金)÷(営業利益+減価償却費)が10倍未満
真のPER EV(企業価値)÷当期純利益が10倍以下
バフェットの利益率(ROIC) 当期純利益÷(棚卸資産+有形固定資産)
たーちゃんの利益率(ROIC) 経常利益×0.6/(棚卸資産+有形固定資産+研究開発費+不動産の保証金)
配当+優待 総合利回りが4.0%以上

「グレアムのミックス係数」が11.25以下か確認する

凄いカッコいい名前がついているけど、PERとPBRがあれば求まる。

「大平洋金属(株) 5541」のPERとPBRは「Yahoo!ファイナンス」でも見ることができる。

PER(会社予想) (連)15.04倍
PBR(実績) (連)0.67倍

ここで、

PBR×PER=0.67×15.04=10.0768

グレアムの「22.5」の半分以下で格安

「ネットネット株」か確認する

ベンジャミン・グレアム氏は著書「賢明なる投資家」の中で「正味流動資産株」が紹介されている(本書の第15章「積極的投資家の株式銘柄選択」)。

正味流動資産のみを考えた簿価よりも安い価格で買える株をなるべく多く取得する。我々が買い付けた銘柄のほとんどは、この「スリム化された」資産価値の三分の二以下の価格で入手したものである。

「ネットネット株」とは書かれてないが、ネットとは「正味の」という意味らしい。

つまり「正味(Net)流動資産(Current Assets)」だが、、なぜ「ネットネット」?

ともかく「工場設備を含むその他の資産は考慮に入れない」(=ネットで残った流動資産)ということを意味する。

グレアム氏の「ネットネット株」を確認

正味流動資産が時価総額を上回ればネットネット株に該当する・・・が意味が分からないので図示化してみた。

この「正味流動資産」を計算するには企業の「決算短信」が必要であり「TDnet」などで見れる。

TDnet(ティー・ディー・ネット)とは、東京証券取引所の運営する適時開示情報伝達システム(Timely Disclosure network)のこと。

開示日を含め約1ヶ月分の情報が無料で閲覧可能。

その中で「連結貸借対照表(連結B/S)」を確認する。

利用するのは「赤字」と「青字」の部分。

正味流動資産×66.7%
=(流動資産-総負債)×66.7%
=(流動資産合計負債合計)×66.7%
=(46,065-7,493)×66.7%
= 25,728(百万円)

「時価総額」は、Yahoo!ファイナンスに載っている「43,363(百万円)」。

これより比率は「0.59」で1未満。

「正味流動資産 < 時価総額」のため、「ネットネット株」ではない

かぶ1000氏の「ネットネット株」を確認

次に利用するのは「赤字」と「青字」の部分。。

正味流動資産
=(在庫評価額を除いた正味流動資産)+投資有価証券ー貸倒引当金ー負債合計
(現金及び預金+受取手形及び売掛金+有価証券)+投資有価証券(流動資産の貸倒引当金+固定資産の貸倒引当金+負債合計)
= (23,113+8,255+2,300)+16,607-(1+5+7,493)
= 42,776(百万円)

「時価総額」は、Yahoo!ファイナンスに載っている「43,363(百万円)」。

これより比率は「0.99」で1未満。

「正味流動資産 < 時価総額」のため、「ネットネット株」ではない。

「EV/EBITDA倍率」が10倍未満か確認する

「企業を買収したとき、その買収資金(EV)を買収先企業の年間利益(EBITDA)でまかなう場合、何年で回収できるか?という指標」になる。

今度は見るのは「四季報」。

= EV ÷ EBITDA
=(時価総額+有利子負債ー現預金)÷(予想営業利益+減価償却費
=(58,000+0-21,482)÷(-1,588+323)
=-28.9

「5倍未満(割安)」「5~10倍(普通)」「10倍以上(割高)」で考えると、マイナスだと割安になっちゃいますが、符号は無視するべきかな。

約29倍なので、割高株。

「真のPER」が10倍以下か確認する

EV(企業価値)÷当期純利益が10倍以下
=(時価総額+有利子負債ー現預金)÷当期純利益
=(58,000+0-21,482)÷2,100
=17.4

「8倍以下・・・割安」「8〜12倍・・・普通」「12倍以上・・・割高」から考えると・・・

約17.4倍なので、割高株。

「ルックスルー利益」を確認する

とりあえず、最低購入価格で例を出す。

= 一株あたり純利益(EPS)× 保有株数
=189.37× 100
=18,937

これは、100株を保有することで年間18,937円の利益を手に入れられると考えます。

現在株価が2,215円で100株保有だとすると、

221,500円で年間18,937円の利益を手に入れられる株だと考えれます。

利益になるのは11年、購入価格だと20年・・と考えるので正しいのかな・・

その他

「バフェットの利益率」を確認する

「バフェットの利益率」は、 個人投資家の角山智氏(通称K山)が名付けたと思われます。

棚卸資産の中身は、次のようになります。

棚卸資産= 在庫 + 半製品 + 仕掛品 + 原材料 + 貯蔵品

ここから、

バフェットの利益率
= 当期純利益÷(棚卸資産 + 有形固定資産)
= 2,100÷(商品及び製品 + 仕掛品 + 原材料及び貯蔵品 + 25,867)
= 2,100÷(5375 + 277 + 4863 + 25,867)
= 0.0577

この指標が低いのは、設備投資をしているにも関わらず、利益が少ない事業。高いのは、少ない投資で、多く儲けることができる事業とのこと。

利益が少なすぎ・・

フリーキャッシュフローを確認する

営業キャッシュフローが「プラス」であれば、本業でそれだけ利益を得られたことになる。

投資キャッシュフロー(土地・建物・株式などの資産の売買)は、成長のために資産を購入している企業であれば「マイナス」になる。

財務キャッシュフロー(銀行からの借り入れや返済、株式や債券の発行・配当金の支払い)は、業績が良い場合、借金の返済や配当金の支払いなどが中心になるので、基本的には「マイナス」になる。

要するに、「営業CF=プラス」「投資CF=マイナス」「財務CF=マイナス」があるべき姿。

確認するには「EDINET」から有価証券報告書や決算短信をダウンロードする。

フリーキャッシュフロー = 営業キャッシュフロー – 投資キャッシュフロー

= (-1067) – (-2233)
= 1166

営業CFが赤字なので、投資CFが黒字のうちに、本業の立て直し図るべきである。

総合利回りが4.0%以上

Yahoo!ファイナンス」を見れば分かる。

2.03%(05/31) 配当利回り(会社予想)

配当利回りも低く、魅力はない

まとめ

ナンピンして長期保有するには魅力が低いので、素直に他の銘柄を物色した方がよさそうだ。

米中関係も気になるし、もっと知識を増やして戦いに出るべきだろう。

初めて「有価証券報告書」「決算短信」「四季報」の数字から状況を把握した。

これを他の人は、どのように整理しているのだろうか・・・?

かぶ1000氏が、自身の利用しているExcel(※ ピンクは含み資産を考慮した実質PBR)を公開してくれている。

Excel上で、上記の値を計算して割高株かの判定をしている。

これをベースに自分でもまとめれば良い気がするが、自動化できそうだ。

  • ファンド情報をウォッチし、差分を追いかける
  • 決算短信からネットネット株算出システムを作成する(既にあるけど)
  • その他の指標も自動表示
  • 日々の変化でアラートを上げてくれる

・・と思ったら、自動的に集めてくれるようなサイトも出てきている。

先を越されたが、自分でも作りたいな。

例)バフェット・コード

20人程度で開発しているサイト。

「EV/EBITDA倍率」などが自動的に算出されている。

例)簡単割安株検索

40代のソフトウェアエンジニアの方が趣味で作っているサイト(ブログ)。

「決算短信」から情報をパースして、ネットネット株を計算している。

例)TDnetSearch

「エイバース」というゲームやCGMサービスを制作しているアライアンスが作ったサイト(ブログ)。

「決算短信」から情報をパースして、Google Chartを使って図示化している。

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