年老いて死を迎えようとした時に一体私に何が残っているのだろう。
私を焼いた後には骨ひとつ残りはすまい……。
その思いが私を駆り立て先祖調査を始めて早20年。
しかし先行きに不安を感じる難しさ……いや、これは難解というレベルではない。
一方で多くの読者から先祖調査への質問が届き、プライベートでは返信の対応に追われている。
これだけ需要があるなら、
「定年退職後には一念発起して起業じゃー!」
と考える事もあるが、先祖調査は地道で薄給で辛い仕事だ……。
ただし将来の事は分からない。まずは、無料セミナー「素人から始める先祖調査方法」を行い名前を売っておくべきか。
と思考を巡らせる事はあるものの、どうせセミナーの参加者は定年退職されたご年配ばかりだし、私が定年退職した頃には他界され潜在顧客になることはないだろう。
最近は、機械学習を使って一枚の写真を動画にする技術がホットだ。
この技術には、さまざまな顔モデルを互いに比較してどのモデルが最も「リアル」かを判断する敵対的生成ネットワーク(GAN)を利用する。
要するに、生成された各モデルを絞り込んで動画に使用する最終的なモデルを選択する。
計算にはGPU搭載、潤沢な容量、高スペックなコンピューターが必要でクラウドサービスを使う事も多いが、貧乏な小生は試せていない。
今回は、技術の深堀りは一旦忘れ先祖調査の一貫として世の中の優れたサービスを紹介する。
故人の一枚の遺影写真を蘇らせる
故人の写真といえば「遺影写真」が真っ先に思いつく。これしか残っていない家庭も多いはず。
私の家系は直系でないので「遺影」はない。唯一保有している先祖の写真は書籍に載っていた「保田(大上屋)保兵衛」という江戸時代末期から明治を生きた人物のものだ。
広島と言えば牡蠣
と呼ばれるようになった理由は、藩から35人の株仲間による独占が認められたからであり、先祖は紛れもないその一人である。
広島から船で大阪まで売りに行ってたと聞く。明治初期の先祖の家庭はさぞかし超裕福だった事だろう。やっぱりサラリーマン駄目だな。
今回は悲壮感を綴る話でないので、話を元に戻す。
自動色付けウェブサービスの比較検証
ググると3つサービスが見つかった。
筑波大学 飯塚助教(前早稲田大学)らによるプロジェクト
シンガポールの政府関係テクノロジーを活用した試みによる「ColouriseSG」
アメリカのAlgorithmiaという名のスタートアップのサービス「Colorize Images」
この中で、「ColouriseSG」はオープンソース化に向けてサービスが中止となっていたので、2種類を試す。
筑波大学 飯塚助教(前早稲田大学)らによるプロジェクトの結果(左:原画、右:変換後)
「Colorize Images」による白黒写真を自動的にカラー化の結果(左:原画、右:変換後)
………………。
セピアになっただけじゃねーか!
あまりに古い肖像画等はPhotoshop等で加工した方が良さそうだ。
はい。完成。
古いモノクロ写真を鮮明写真として復元する
「MyHeritage」は、イスラエルの企業MyHeritageが手がけるサービスで、先祖調査マニアは知っている家系図を作成するウェブサイトだ。
このサイトが、実はものすごく古いモノクロ写真も復元できてしまうAIの技術を使った機能「Enhance your photos」というサービスを公開している。
イスラエルのIT技術って半端ない。
昔は「トラスター(TRUSTAR)」というイスラエル軍事機関が開発した嘘発見ソフトを活用して、異性の私への本心を確認させてもらったわ。
多くの異性から嫌われていたからね、私。
で、肝心の結果がこちら。
左:原画、右:変換後
ちょww、きめ細かいすべすべの肌になった!
究極美肌のプリ機もビックリ、写真撮る前に化粧要らないじゃん。
何これ?イスラエル人って天才?
昔、私に精神的苦痛を与え続けた会社の先輩が、
先輩「ボケた写真もいつか技術が進歩して鮮明になると信じて保存している」
というのを聞いて「撮り直せよ、コイツ アホだな」と思っていたが、技術の進歩って凄まじいな。
そして、この先輩は部長まで上り詰めたので、未来も予想できない生涯平社員のお荷物アホは私だったわ。
写真の中の人の顔に動きをつける
上で、モノクロ写真復元機能を紹介したが、イスラエルMyHeritageの技術探求は止まらない。
ディープラーニングで写真の人物に動きをつける「Deep Nostalgia」というサービスも先月末に公開している。
「Deep Nostalgia」は、D-IDという企業の顔認識技術「Live Portrait」がベースとなっているそうだが、ここでは技術の深堀りはしない。
低解像度の写真もアップコンバートを経て高解像度で動かせるのが特徴らしく、「最愛の祖先を生き返らせることを目的としています」と書かれている。
とはいえ、さすがに動画はリアリティの追求が難しいんじゃない?
生身の人間との違和感がより浮き彫りになることを、俗に「不気味の谷」と呼ぶが、それを感じてしまいそうだ。
さて実験。
じっちゃーん!!
(C)吾峠呼世晴/鬼滅の刃、[トレース引用] めぐ(@217Megu_Hiro)
あれ?これ、ご先祖様の完全な動画フィルムじゃん。
ほら、こう瞳をつむれば、懐かしい昔一緒に遊んだ思い出を思い出す…………ことは無いけどさ。会ったこと無いし。
技術の進化スゲーな。
そして、やっぱり朧気に祖父や曽祖父の顔に似てる。「不気味の谷」とか感じないよ?
まとめ 死者への冒涜か?
必ず物議を醸し出すであろう、個人的な倫理感を最後に語っておく。
日本でAIに関する大きな出来事の1つは、2019年の第70回NHK紅白歌合戦で「AI美空ひばり」による3D映像の歌唱が流れたことだと思ってる。
著名人やメディアからは、
「倫理的に問題ではないか」
「死者への冒涜だ」
との意見が上がり、否定の世論が多く出た。
私としては技術としてはありかもしれませんが、歌番組の出演、CDの発売は絶対に否と考えます。
(中略)
ひと言で申し上げると、冒涜です。
山下達郎のサンデー・ソングブック ーより引用
焦点は、AIを使って故人の人格までコピーしてしまった事だろう。
少なくとも、故人の写真の繊細化、動画化程度であれば、その範疇じゃないというのが個人の見解だ。
そしてAIなんて道具なので、使いたい人だけが使えば良いんだよ。
なお、先日からSNSで人物写真から動画変換し「恋のマイアヒ」の楽曲を歌わせる糞アプリが流行している。
今回日記で紹介したサービスは先祖の回顧目的だが、マイアヒは死者への敬意を完全に忘れて笑い者にしてるだけだ。
これは死者への冒涜ととられても仕方ない。