石鹸が無い時代の衣服、食器、身体、髪の洗浄素材・方法は?

最低限のウイルスから生命を守ってくれる

 

それが石鹸

 

科学イベントで「石鹸づくり」をよく見かけるよね。

小学生・幼稚園児でも作れる簡単な「石けん/紙石けん(熱を使わない)」作り方まとめ
子供の学校の担任は「習い事で忙しいから宿題は無し」という方針らしい。が、週末に珍しく出た宿題がこれ。「石けんの作り方」を調べてくる実は同じテーマの日記を書こうとして数年...

僕は未だに中二病のようで、無人島や異世界転生した時の生きるための知識を溜め込むのが日課になっている。

 

だけど……

サバイバルな世界や異世界で石鹸作るのは簡単ではない。

© Dr.STONE/稲垣理一郎/集英社

 

異世界転生ものでも時々作成している話があるが、そもそも重曹あるなら石鹸は既に発明されてるわww

© 異世界迷宮でハーレムを/氷樹一世・蘇我捨恥

 

重曹とは「炭酸水素ナトリウム(別名重炭酸ナトリウム)」であり、化学式 NaHCO₃で表される。

電気分解などをして作り出すものであり、不純物除去等が必要で一般家庭で作るのは無理ゲーだ。

日本における石鹸の歴史は古くない。

日本に初めて石鹸が入ってきたのは16世紀(1543年頃、織田・豊臣時代)で、一般庶民が石鹸を使うようになったのは明治以降。

ポルトガル語の「サバン」を聞き間違えて「シャボン」となった。

年号 内容
古代 ふみ洗い、もみ洗い、手洗い
700年頃(平安時代) サイカチのさや、ムクロジの果皮を天然の洗剤として利用
1000年頃(平安時代) タライ・砧(きぬた)を利用開始
1543年頃(安土・ 桃山時代) 日本に初めて石鹸が入ってきた
1700年頃(江戸時代) 灰汁・ムクロジ・サイカチ・石灰などを洗浄用に使用(シャボン(石けん)は貴重品のため洗浄に使用することは稀)
1873年(明治6年) 国産の石鹸が初めて売り出された(1個10銭)
明治中期 洗濯板の登場
1890年(明治23年) からだを洗う国産の化粧石けんが登場
1926年(昭和1年) 国産のシャンプーが登場
1930年(昭和5年) 液体のシャンプーが登場
1951年(昭和26年) 家庭用粉末衣料用合成洗剤が登場
1956年(昭和31年) 台所用中性洗剤が登場

© 発明・発見のひみつ (学研まんが ひみつシリーズ)/相田 克太

もともとは文明が滅んだら石鹸は作れるのか?を調査してたが難しすぎてお蔵入り。

未公開記事が400超えたので、今回は昔の人の洗浄方法だけまとめておく。

江戸時代以前の他国含めた洗浄素材まとめ

石鹸が誕生する前は、身体を洗うときは川などで身体をこすり、衣服は

  • たたく
  • 足で踏む

という方法が主流だった。

つまり、科学的な方法で汚れを落とすのではなく、物理的な力を加えることで汚れを取るという洗浄方法。

 

やがて、植物の灰に含まれる灰汁や米ぬか、米のとぎ汁などによって汚れが落ちるということが発見された。

科学的に4つに分類。

石鹸や洗剤がなかったころの洗浄剤
石鹸の渡来は16世紀 日本に初めて石鹸が入ってきたのは16世紀(1543年頃、織田・豊臣時代)。一般庶民が石鹸を使うようになったのは明治以降です。 国産の石鹸が

タンパク質を分解する性質を利用

木灰・ワラ灰・海藻灰、尿、鶏糞などアルカリが油を乳化したりタンパク質を分解する性質を利用した洗浄。

素材 説明
植物の灰の灰汁(アク) 江戸時代には桶に水を満たして灰を入れ、底の栓口から灰汁がしたたる「灰汁桶」が各戸に置かれ、手洗いしていた
尿・鶏糞 イラン地方の織物師たちは布を尿で洗い、韓国では灰汁のほかに、特に白物の洗濯には尿が一番いいとされ、各戸には「尿溜」が置かれてた

灰汁は、人類最古の洗剤と言われる。

日本でも洗濯には灰汁が用いた。

© ソウナンですか? Case.55/岡本健太郎/講談社

 

明治以降には石鹸が登場、戦後になって合成洗剤が普及したが、その時代でも灰汁は洗浄剤として広く使われていた。

サポニン(天然の界面活性剤)を利用

植物(ムクロジ、サイカチ、大豆、米など)に含まれる天然の界面活性剤であるサポニンを利用した洗浄。

素材 説明
ムクロジの果皮 ムクロジの果皮はサポニンを含み、水に混ぜて振ると泡立つ。洗濯用
サイカチのさや・実 サイカチはマメ科で、果実の莢にはサポニンが含まれ、石鹸の代用とされた
米、大根、大豆や芋の煮汁 細かい泡が立って吹きこぼれるれるのはサポニンが溶け出しているから。食器洗いに用いられた
米のとぎ汁 米のとぎ汁中に含まれるサポニンが洗浄要因。布の袋に米のぬかを詰め身体をこすっていた。また食器洗いに用いられた

サイカチやムクロジ(無患子)の実には、天然の界面活性剤サポニンが多く含まれているので、世界中で石鹸や洗剤として使われてきた。

石鹸(陰イオン性、弱アルカリ性)とは違い非イオン性かつ中性だ。

英語でムクロジ(無患子)はsoap nuts。

享和3年(1803)に出版された「本草綱目啓蒙ほんぞうこうもくけいもう」には、ムクロジについて、

その外皮を俗にシャボンと呼び、油汚れの衣を洗うに用ゆ

と記述がある。

洗顔とは書いてないので、あくまで洗濯用。

5キロの洗濯物で、10個程度のムクロジを小袋に入れて利用。

同じ実で10回ほど、実が割れてバラバラになるまで洗濯ができ、割れた実はそのまま植木の肥料として土に戻せるため究極のエコ。

コロイド物質の吸着作用を利用

高分子のたんぱく質やコロイド状の物質の吸着作用を利用した洗浄。

素材 説明
米ぬか 高分子コロイド物質を含み吸着作用を持つ。衣服や身体の洗浄、洗顔、洗髪などに活用
小麦粉や麺のゆで汁、フノリ、豆を細かくした粉 シャンプーとして利用。フノリをお湯に浸け溶かし、うどん粉を混ぜる。髪に刷り込み櫛でとき流す
卵白、ツバキの実の油かす 江戸末期の洗髪に利用

庶民も白米を食べるようになった江戸時代後期には、米ぬかを洗顔料やからだを洗う石鹸代わりに利用していた。

江戸後期の美容のバイブル「都風俗化粧伝」(文化10年、1813年刊)の「湯化粧の伝」には、次のような記載がある。

湯を使ってぬか袋で顔をよく洗い、白粉を薄くほどこす

また、シャンプーに使われたのが

  • うどんの素材うどん粉
  • 海藻のフノリ

ほかにも卵白、粘土、灰汁あく、ツバキの油粕かぶらかすなども使われた。

【うどん粉で洗髪】江戸時代は石鹸や洗剤として意外な物を使っていた!【灰で食器洗い】 - 江戸ガイド - Page 4
今のようなシャンプーや石鹸、洗剤がなかった江戸時代。人々は何を使って身体を洗っていたのか?また、食器や衣服の洗剤は何を使っていたのか?江戸時代の石鹸・洗剤事情をまとめました。 - Page 4

吸着性に優れた粘土鉱物を利用

多孔質で吸着性、脱色性に優れた粘土鉱物で汚れを吸い取る洗浄。

素材 説明
フラー土(漂白土) ローマ時代は小鉢に入れられたフラー土を使用し油汚れを落とした。イギリスでは19世紀まで羊毛の洗浄に用いた
酸性白土 日本で古くから、洗濯粉として、また洗髪、鍋や釜を洗うものとして日常的に用いられてきた

などが汚れを取ることを知り、身体や衣類の洗浄に利用するようになった。

おわりに

今では石鹸は安価でどこでも手に入る。

明治時代以前にな石鹸があれば助かった命も多数あった事だろう。

 

ただし無人島や異世界、文明が滅んでホイホイと作れる品物ではない。

いざという時に石鹸の代用品を知っていると便利……なことは人生で一度も無かったが、江戸時代の暮らしを理解するのには役立つ。

なお、蛇足だが歯磨きには「塩」を使っていた。

© ソウナンですか? Case.55/岡本健太郎/講談社

房ようじは、木の先をつぶして歯ブラシのようにした道具。

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