「帰化植物」とは、人為的な手段で持ち込まれた植物のうちで、野外で勝手に生育するようになったもののことです。
岩瀬徹「日本の植生」2005
新帰化植物 | 江戸時代末期から現在にかけて渡来した植物 |
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旧帰化植物 | 江戸時代末期以前に渡来した植物 |
史前帰化種 | 有史以前に渡来したと考えられる植物。栽培植物と稲作などとともに持ち込まれた水田雑草なども含まれる |
逸出種 | 栽培植物や観賞用などで移入された植物がその地で繁殖力を持ち増殖している植物 |
前回3月、4月、5月に調査した時には、多くの花が外来種でした。
6月になりましたが、5月に咲いてた雑草と大きく変化がありません。徐々に増やしていきます。
環境省が制定した外来生物法は、海外から意図的、非意図的に日本へ持ち込まれた動植物によって、在来種が駆逐されるなど生態系に影響が及ぼされることを防ぐことを1つの目的としています。
中でも「特定外来生物」は甚大な被害が想定されるため、罰金付きの法的規制が課されています。
「要注意外来生物」は、イエローカード的存在の生物で、法的規制はありません。
現在、指定されている植物は84種で、ヘラオオバコのほか、ムラサキカタバミ、ハルジオン、ヒメジョオン、キクイモ、外来タンポポ種、ワルナスビ、ブタクサ、アメリカセンダングサ、オオアレチノギク、ヒメムカシヨモギなどがあります。
帰化植物
コバンソウ(小判草)
ヨーロッパ原産で日本には明治時代に観賞用に導入された帰化植物である
一つ一つは虫がぶら下がっているように見えて気持ち悪いと感じる人もいます。
コバンソウは「穂」の部分を食用でき、コバンソウの穂を軽く炒めたり、生のまま食べられます。
ただし、食用としては残念ながら栄養学的にも利用価値はありません。
ムギクサ(麦草)
オオムギに似た穂をつけるヨーロッパ原産で明治初期に侵入した帰化植物である。
「侵入生物データベース ムギクサ」として掲載されています。
ムギクサの粒(種子)は非常に小さいため、食用には適さないとのこと。
美味しくは食べられないようです。
【要注意外来生物】ヘラオオバコ(箆大葉子)
幕末にヨーロッパから非意図的に移入しました。
外来生物法で要注意外来生物に指定されました。
「侵入生物データベース ヘラオオバコ」として掲載されています。
繁殖力が強いのが 特徴で、1個体で最大10,000個もの種子を作るそうです。
葉を食べてみた人もいますが、苦く草っぽさが強いようです。
ただし、海外では動物の飼料として栽培されていたり、人用のハーブ等として薬用や食用として利用されていることが知られています。
ヒメジョオン(姫女菀)
ハルジオンとヒメジョオン、春から初夏にかけて咲きますが、とても良く似た花です。
※画像:ハルジオンだと思われるので再撮影中
渡来はハルジオンより50年ほど早い明治維新前後で、当時「柳葉姫菊」や「御維新草」などと呼ばました。
ヒメジョオン | 多少花びらのように太い、茎を折ると中が綿のように詰まっている。花期は5月〜8月 花弁は約100本で白〜淡紫色。蕾のときも頭花は上を向く |
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ハルジオン | 花びらが糸のように細い、茎を折ると中が空洞。花期は4月〜6月 花弁は150〜400本でピンク色がかる傾向にある。蕾のときは枝先が湾曲して頭花をうなだれてつける |
若芽は食用となりますが、ハルジオンの方が葉がやわらかく、ヒメジョオン の方は質がややかたいようです(場所によっては食用に適さない)。
史前帰化植物
イヌホオズキ(犬酸漿)
食用のナスと同じナス属の植物です。
分類 | ナス科ナス属 |
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原産地 | 日本在来種 |
誕生花 | 7月17日 |
花言葉 | 嘘、嘘つき、真実 |
イヌホオズキ(Solanum nigrum)、アメリカイヌホオズキ(S. ptychanthum)、テリミノイヌホオズキ(S. americanum)の3種の比較。
- イヌホオズキ、テリミノイヌホオズキ・・・・・小果柄が交互にズレて出る
- アメリカイヌホオズキ・・・・よく見ると一点ではないがパッと見は一点に見える
日本には古い時代に入ってきたものとも思われる史前帰化植物です。
花は白い花に黄色いおしべが突き出しており、ナス・トマト・ジャガイモに似ています。
果実は直径7mm程度と小さく、熟すと紫黒色になります。
見た目的に食べれそうですが、イヌホオズキは全草にソラニンを含んでいる有毒植物です。
食べると嘔吐、下痢、呼吸麻痺で苦しみます。
別名「バカナス」とも呼ばれ、ホオズキやナスに似ているが役に立たないことから名付けられました。
在来種
ドクダミ(蕺草、蕺)
分類 | ドクダミ科ドクダミ属 |
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原産地 | 日本在来種 |
誕生花 | 5月15日 |
花言葉 | 野生、白い追憶 |
藤原道綱母の「蜻蛉日記」の石山寺詣の段で次のように書かれている箇所があります。
【原文】
かくのみ心尽くせば、ものなども食はれず。「しりへのかたなる池に蕺(しぶき)といふもの生ひたる」といへば、「取りて持て来」といへば、持て来たり。笥(け)にあへしらひて、柚おし切りてうちかざしたるぞ、いとをかしうおぼえたる。
【現代語訳】
このように心労を重ねているので、食欲がない。寺の裏の池に「しぶき」というものが生えています、と言うので、取って持って来て、と言うと持って来た。器に盛り、柚子を切って添えているのでなかなか美味しいと思った
岩波の「日本古典文学大系」の「かげろふ日記」の校注者川口久雄氏の弁。
川口氏は「臭酸があって小毒あり、薬用にしか供さないドクダミを、珍重するいわれがない。」とし、「しぶきはシブクサ(いわゆるギシギシ)をさすのだろう」と記している。
昔から日本の三大民間薬の一つに数えられ、薬効が多岐にわたるところから十薬とも呼ばれています。
- 天ぷら
- 爽健美茶の主原料の1つ
- 地中に伸びるい根茎にはデンプンがあり、日本で食糧難の時代に、茹でて食べていた
ただし、腎疾患を持っている人が飲むと高カリウム血症になる恐れがあり、どくだみ茶も過剰に摂取すると、エルシトリンという成分でお腹がゆるくなる、腸が張ることがあります。