「外来種(外来生物)」とは、生物がもともと生息していた場所から別の場所へ人によって持ち込まれたり、広がったりしたもののことを言います。
前回3月、4月に調査した時には、多くの花が外来種でした。
5月になったので新しく咲いている雑草の花を調べました。
と言うより、新型コロナウイルスで施設・大型店舗は閉鎖、公園でも知り合いに会えないので道端を歩いて楽しむ程度しかありません。
温かい季節になり開花する種類が増えていますが、それに応じて外来種も増えています。
※ 外来種とくに園芸花には詳しく無いので、間違いを見つけたら教えて頂ければ幸いです。
外来種
【外来種】ニワゼキショウ(庭石菖)
白い6枚の花弁で中央と筋が濃い赤紫色をした花をしています。
花色は「白」のものと「赤紫」のものがあり、中央部はどちらも黄色です。
アヤメ科ニワゼキショウ属の一年草です。
明治時代にアメリカから渡来した帰化植物です。
名前の由来は「庭に咲くセキショウ(石菖)」、つまり水辺に生えるセキショウの葉に似ているからだそうです。
因みに、ニワゼキショウには薬効や毒性、食用になるなどの報告は聞かれません。
【外来種】シロツメクサ(白詰草)
多くの人が名前を知っている「シロツメクサ」ですが、1846年にオランダから渡来、家畜の飼料用として導入されたものが野生化した帰化植物です。
国立環境研究所のサイトにも「日本の外来生物 シロツメクサ」として掲載されています。
国内におけるシロツメクサの影響としては次のように書かれています。
在来種,畑作物との競合.土壌窒素の蓄積,アレロパシー作用.家畜が多量に食べるとシアン化合物が有害.
影響を受ける生物:在来の草本植物,農作物
因みに「クローバー」とは、マメ科シャジクソウ属の植物の総称です。
「よつばのクローバー」として有名ですが、
- 三つ葉のクローバーはキリストの三位一体(父なる神/キリスト/聖霊)
- 四つ葉のクローバーは十字架
だと言われ、四つ葉のクローバーは十字架を示すため幸運をもたらすと言われています。
なお、他のサイトには若い葉や花は食用に。 炒め物・チャーハン・和え物・天ぷら・かき揚げにするのがオススメと書かれています。
ただし、シロツメクサを食べる場合は、【必ず】加熱することを強くお勧めします。
なぜなら、牧牛馬の口内炎や食欲不振の原因となる青酸配糖体リナマリン、セタウストラリンを含んでいることがあります。
この青酸化合物は、熱処理において分解されるため、加熱処理をすれば 無害化されます。
もしくは発芽したばかりのものは無毒なので、そちらを食べてください(カイワレみたいなも)。
クローバーは牧草として有名ですが、牛ですらクローバーを食べ過ぎると「クローバー病」という病気になります。
【外来種】ムラサキツメクサ(紫詰め草)
和名ではアカツメクサ(赤詰め草)、あるいは一般に赤クローバーとも呼ばれます。
明治期においてシロツメクサ同様に、ヨーロッパから牧草として日本に持ち込まれた外来種です。
花の茎を切って、下から吸うとほのかに甘い味がします。
レッドクローバーでジャムを作られている方もいます。
【外来種】アメリカフウロ(亜米利加風露)
花は特徴が少ないですが、葉は掌状で基部まで深く5~7裂しているので、すぐに見分けがつくと思います。
北アメリカ原産の帰化植物で、日本では1932年に京都府の伏見区で牧野富太郎によって発見されました。
牧草などに種子が混ざっていて持ち込まれたものとされています。
アメリカフウロは、フウロソウ科フウロソウ属、あの生薬のゲンノショウコの仲間です。
強害な雑草化していますが、沖縄県ではジャガイモ青枯病に対する抗菌成分を有することを利用し薬剤処理に頼らずにジャガイモ青枯病の防除を行っているそうです。
食用の記録は見つかりませんが、毒性はなくサラダにして食べたというブログも幾つか見つかりました。
薬効もあるそうですが、薬用成分が少なくあまり効き目は無いとの事です。
【外来種】ユウゲショウ(夕化粧)
ユウゲショウ、アカバナユウゲショウ、ベニバナユウゲショウなどと呼ばれます。
明治時代に北アメリカ南部から観賞用に輸入し栽培されていたものが野化した雑草です。
昼から夜間にかけて開花します。
国立環境研究所のサイトにも「日本の外来生物 ユウゲショウ」として掲載されています。
国内への影響は次のとおりです。
在来種との競合,遺伝的撹乱
なお、若芽や花を食用とする事ができますが、まれに吐き気を催す事があると言う報告もあるようです。
食用とする場合は、一度に大量に摂取しないように注意しましょう。
【要注意外来種】コマツヨイグサ(小待宵草)
鳥取砂丘を緑化しており、要注意外来生物(在来の生態系を崩す植物)となっています。
1910年代前後に北アメリカから入ってきた帰化植物です。
マツヨイグサにはマツヨイグサ、メマツヨイグサ、オオマツヨイグサ、コマツヨイグサと4種類あります。
花弁の基部は赤くないものが「コマツヨイグサ」です。
国立環境研究所のサイトに「要注意外来種 コマツヨイグサ」として掲載されています。
在来の砂丘植生と競合,遺伝的撹乱
影響を受ける生物:在来の砂丘植物(競合)
コマツヨイグサは根茎を根菜としていただくほか、おひたしや天ぷらなどで食べることもできます。
さらに健胃、整腸、下痢止めなどの薬効もあります。
【生態系被害防止外来種】ブタナ(豚菜)
タンポポに似た花にブタナがあります。
自然分布 としては、ヨーロッパですが1933年に札幌、1934年に神戸で確認され、1940年代以降分布拡大されています。
[引用] 国立環境研究所 侵入生物データベース
なお、ブタナは、国立環境研究所で外来生物法の要注意外来生物(生態系被害防止外来種)に指定されています。
理由は放置された空き地なんかはこれ一色で埋め尽くされる等かなり繁殖力が強いためです。
豚がよく好んで食べることから、フランスでは「豚のサラダ」と呼ばれています。
【外来種】シロバナマンテマ(白花マンテマ)
名前に反して花はふつう淡紅色です。
イタリアのサルディーニャ島原産の帰化植物で、江戸時代に栽培のために移入されたものが逸出したといわれています。
現時点で食用になるとの情報が見つかっていませんが、毒性の記載もありません。
【外来種】モモイロヒルザキツキミソウ(桃色昼咲き月見草)
名前のとおり昼にも咲いているツキミソウです。
北アメリカ原産で、大正末期ごろ観賞用に輸入・栽培されていたものが野生化しました。
繁殖力が強く、局所的に大量に咲いているのを見かけます。
食用になるという話はありませんでした。
【外来種】コハコベ(小繁縷)
芹 ( せり ) 薺 ( なずな ) 御行 ( おぎょう ) 繁縷 ( はこべら ) 仏の座 ( ほとけのざ ) 菘 ( すずな ) 蘿蔔 ( すずしろ ) これぞ七草
春の七草に詠まれている「ハコベラ」はハコベの事であり、在来種の「ミドリハコベ」を指します。
Wikipediaによると、世界に約120種あり、日本には約18種あるそうです。
国立環境研究所の「日本の外来種全種リスト」によると、「コハコベ」は外来種であり、「ミドリハコベ」は在来種です。
その他、外来種として掲載されているものは次の8種類です。
【ナデシコ科】
- カラフトホソバハコベ
- アワユキハコベ
- コハコベ
- イヌコハコベ
- ヤンバルハコベ
- ハナハコベ
- ヨツバハコベ
【ヌマハコベ科】
- ツキヌキヌマハコベ
麦の栽培とともに渡来したという説や、明治時代以降にヨーロッパから渡来したとされる説があり、詳しいことは分かっていません。
全体が小さいコハコベ、食用、薬用になるミドリハコベ、他にウシハコベなどがあります。
両者の違いは、オシベの数で、通常、コハコベは3~5本、ミドリハコベは8~10本くらいとのことです。
上の写真では分かりにくいですが、オシベが8本以上無いので、写真のハコベは、「コハコベ」だと思われます。
なお、ナデシコ科で花が似ていて区別がつきにくい「ミミナグサ」「ハコベ」「ノミノツヅリ」「ツメクサ」を図解入りで説明されているサイトがありました。
[引用] ハコベの見分け方/イラスト付き
非常に参考になります。
ハコベは日本独特の民間療法「はこべ塩」として利用されてきました。。
【作り方】
ハコベの地上部をミキサーにかけてジュースを作り、油気のないフライパンで食塩を炒りながら汁を少量ずつ加えて乾燥させます。
歯茎が出血したり、痛むとき効果があるとされますが、あくまで予防の目的で利用すべきでしょう。
江戸時代には歯磨き粉として利用されたとの記載もあります。
【外来種】ネバリノミノツヅリ(粘り蚤の綴り)
ハコベに似ている植物ですが、前述の図があれば区別できます。
なお、茎、葉、萼など全体に腺毛がある(べたべたとした粘液が出るものもある)をノミノツヅリの変種とし、「ネバリノミノツヅリ」と呼んでいます。
その小さな葉っぱから 蚤の着物をイメージして付けられた名前で、もともとヨーロッパ原産です。
ノミノツヅリは史前帰化植物(大昔)で、ネバリノミノツヅリは帰化植物ではないかと疑われています。
積極的に食用にはしませんが、ハコベなどに混じって天ぷら等で食べられることはあるようです。
園芸植物から逃げ出した外来種
意図的に園芸植物として植えたけど、管理が行き届かずに種がこぼれてしまった(?)植物です。
【外来種】ヒメヒオウギ(姫檜扇)
ヒメヒオウギは半耐寒性の秋植え球根で、夏は休眠します。
日本へは南アフリカから大正期に入り、観賞用に栽培されてきました。
暖地では、こぼれダネで自然にふえるほど丈夫です。
花は白やピンクで、中心部が赤の複色なのが特徴です。
食用という話は聞きません。
在来種
ナズナ(薺)
芹 ( せり ) 薺 ( なずな ) 御行 ( おぎょう ) 繁縷 ( はこべら ) 仏の座 ( ほとけのざ ) 菘 ( すずな ) 蘿蔔 ( すずしろ ) これぞ七草
春の七草に詠まれている「ナズナ」はアブラナ科ナズナ属の越年草です。
別名、ペンペングサ(ぺんぺん草)、シャミセングサ(三味線草)。
紀元前4世紀後半~3世紀後半頃に麦栽培の伝来とともに、中国を経由して日本に渡来しました(史前帰化植物)。
分類 | アブラナ科ナズナ属 |
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原産地 | 日本在来種 |
誕生花 | 1月17日 |
花言葉 | あなたにすべてをお任せします、あなたに私のすべてをささげます、君を忘れない |
ご存知のように、若葉は食用になります。
スイバ(蓚、酸い葉)
茎や葉を口に入れて噛むと酸っぱいことから「酸(す)い葉」の意で名付けられました。
分類 | タデ科スイバ属 |
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原産地 | 日本在来種 |
誕生花 | 1月17日、10月26日、12月1日、12月4日 |
花言葉 | 愛情、親愛の情、忍耐 |
スイバとよく似ていて区別の難しい草にギシギシがあります。
葉の基部が、ギシギシでは丸みを帯びていますが、スイバでは矢じり型で尖がっています。
また、花穂がギシギシでは緑色(のち褐色となる)ですが、スイバでは赤みがかっているので区別できます。
[引用] 地方独立行政法人 桑名市総合医療センター 2月 スイバ(酸葉)
ヨーロッパ、特にフランスでは、ソレルとも呼ばれ、野菜として食べられます。
葉はみそ汁に入れるなどして食べられますが、紅い葉をジャムにすると適度に酸味があり美味しいそうです。
ヒルガオ(昼顔)
分類 | ヒルガオ科ヒルガオ属 |
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原産地 | 日本在来種 |
誕生花 | 6月25日 |
花言葉 | 絆、優しい愛情、交誼、和やかさ |
「コヒルガオ」と「ヒルガオ」はよく似ており、葉の形や花柄の翼の有無で見分けますが、中間的なものもあります。
[引用] 形とくらしの雑草図鑑(全農教)
なお、ヒルガオは薬用植物でもあり、全草を乾燥したものは旋花(せんか)という生薬になります。
若い蔓や葉は、軽く茹でてお浸しや和え物にして食べられ、生の葉は天ぷらや油炒めに、花は湯にくぐらせてから酢の物にして食べることができます。
まとめ
外来種問題は、時代とともに変わる人間の生活スタイルや価値観の変化が常に影響しており、そうした生き物の境遇はいつだって私たち人間の都合によって左右されています。
昔はあった「自然」に対する畏怖や敬愛の念というものは失われつつあり、近年は人間の都合で好き勝手に自然に手を加えています。
まずは、自分が住んでいる地域に関心を持ち、自分たちの身の回りの理想的な生態系や環境とは何かを、地域単位で考えることが大切です。