2019年3月31日「Yahoo!ジオシティーズ」がサービスを終了した。
ネット上では
「貴重なFlashを保管していたサイトが滅びてしまった」
「資料が喪失した」
などと憐れむ声が聞こえて久しい。
Flash Playerのサポートは2020年12月31日をもって終了してしまったが、「おもしろフラッシュ」は高く多くの人に受け入れられた文化だった。
ちなみに「おもしろフラッシュ」は下記にまとめがある。
多くのサイトが閉鎖した中で、1990年代後半~2000年代前半頃のネット住民の勇姿をネット上に残さずにはいられない。
年齢的には30代後半のネット住民たち。
当時のネット住民は
毎日23時になると活動(テレホーダイ)
そして
ソース内のコメント非表示欄に記載されたURLに飛んで、
大量の偽の裏サイトへの入口から本物を見つけ出し、
大量の分割ファイルを結合して偽装拡張子を識別し、
たどり着いた先は404かブラクラ
という地獄を毎日見てきたヤツら
面構えが違う
© 進撃の巨人/諫山創/講談社
この活動は風化する前に活動遺産として後世に語り継がねばならないと思ってる。
僕なんて末端レベルの知識しかないけど、伝える手がかりを失うことは いかに悔しいことだろう。
ありのままを書き残し 我が同胞たちに長く傳えたい。
199X年 ネット世界は割れの炎に包まれた
「割れ」とはWarez(ワレズ)。
海外発祥のネットスラングで、違法コピーされたソフトウェアのこと。
アングラ(裏)の世界では既に割れやエロ画像に対して様々な偽装が氾濫していた。
しかし この世界にも少しずつ違法行為を取り締まる動きが強まっていた。
そこで監視の目を欺くために
「偽装」「暗号化」「分割」を行ってファイルをアップロードする
というのが常識化していった。
このため
600MBのファイルが60個程度に分割アップロードされてた時代。
低速回線で接続も切れる中でダウンロードに数日かけて落としていた時代。
翌日にはファイルが消されていて結合できず泣く泣く諦めてた時代。
さらにファイルが壊れていて結合できず泣く泣く諦めてた時代。
そして偽装を解くには偽装元のツールが必要ななため、ダウンロードしても偽装が解らず泣く泣く諦めていた人が大勢いた時代。
思い起こせば、今の30代後半の多くの男性は、エロサイトや割れサイトの本物の入り口を見つけることで危険回避能力を鍛えられたのだと思う。
1999年 割れ全盛期の救世主「RarUty(らるち~)」登場
偽装、暗号化はそれぞれのツールによってプロセスが違うので本来「解除」「復号」には元のツールが必要になる。
「偽装」「暗号化」形式には膨大な量があり元のツールを探すだけでも一苦労だった。
そんな時
様々な偽装を1つで解除できるようなツールがあると便利だ
ということで始まったのが
復元プロジェクト(多形式対応偽装解除ツール)
開発当初は開発者側の思考と興味で作られていたが、一般公開するにつれ次第に使用者側の希望から開発が進められるようになっていった。
そして、1999年3月8日にv1.00がリリースされた
元祖復元ツール「RarUty(らるち~)」(Listy 氏作)もその一つでした。
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-SanJose/1690/
なんとRiz 99、ぽこにゃん、御茶義理、分割くん、はまえぼ、Jydivide、JDAインプラント、クローキングBMP、noise、うそまっぷ、インプラントgifに対応。
さらに外部DLLがインストールされていれば、LZH/ZIP/RARなど11種類の圧縮ファイルを解凍可能であり、裏だけでなく表の世界でも広く利用された。
ただしアイコンは「マルチ(声:堀江由衣)」。
To HeartというLeafから発売されたエロゲーで、当時熱狂的なオタクファンが多かったキャラ。
再配布は自由(実行時にVisualBasicランタイムが必要と明記が必要)なのでUploadしておいた(Zipしか置けないので変換済)。
起動してみると現在のPCでも動作した。
2000年 後継機としてMalty(まるちー)が登場
「RarUty(らるち~)」の開発者 Listy氏が一身上の都合により2000年6月2日のVersionを最後に更新を中断。
開発終了した「RarUty(らるち~)」の後継機となるよう開発された「Malty(まるちー)」
開発者はhiro氏。
http://www.yamabuki.sakura.ne.jp/~rank-es/resp/
RarUtyで対応していない種別にも対応していた事もあり、RarUtyでダメだったらこっちを試していたユーザも徐々に「Malty(まるちー)」に移行。
具体的にはJACK、rez、*.001からの結合、ぽこにゃん、DF8偽装ヘッダ除去、BA、猫缶、A562B286B3CFB2EE、猫缶(1~4)、謎の形式6つ、CRCエラーのRAR書庫修正などに対応していた。
2001年 偽装解除ツールは「エクスプローラ形式」か「D&D」か?
「Malty(まるちー)」は未だに開発をしていたけれど「人柱版」が多いため徐々に使い勝手が良いものでは無くなってきた。
そこで頭角を表したのが
多大な偽装形式にも負けず対応数No.1を誇った「Melt it !」(hippo氏)
http://hippo.zip.to
ドラッグ&ドロップで新しい形式にも対応した「そ」(Pandora氏)「支天輪」(RE – soft氏)
http://asdfgfdsa.tripod.co.jp/
http://www.bbap.cc/~re-soft/
そしてプロジェクト最後まで残って開発されていた「詩子様」(Lizel氏、Cres氏)
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/3542/
これらは開発者側の思考錯誤と努力の結果生み出されたもの。
なお、当時のサイトはなぜか「住所」「趣味」「愛車」「PC環境」を載せるのが流行っていたのが今でも不思議でならない……。
2002年、全てのWeb割れが死滅したかのように見えた
21世紀の初め(2001年)に新しいタイプの情報交換技術が生み出された。
それが「Napster」「Gunutera」「WinMX」などの
P2P型の交換ソフト
これらはネットに繋ぐことで、同じようにネットに接続している他者から
欲しい情報、データをダウンロードできた。
このソフトはたちまち流行。
なので「詩子様」の開発者Lizel氏は
「これからこういった類のツールは必要とされない」
と判断し、2002年1月18日に開発の打ち切りに踏みきったそうだ。
ただし、そんな時代であってもしぶとくWeb割れに注力する者達もいた。
その頃には偽装はさらに進化し、偽装されていること自体も知ることが難しい形に変化していた。
偽装を知る手がかりは、サイト内の「掲示板」から推測、もしくはサイトにある画像から推測することになる。
例えば
- 黒い四角なら「Black Alubum」
- モー娘の画像なら「Love Machine(愛称:ラブマ)」
- PNG 画像なら「PINGU」
- PNG で砂嵐画像であれば「秋音」
- JPG で砂嵐画像であれば「Longinus(愛称:でんこ)」
- BBM ファイルがあれば「BDBZM(愛称:あやや)」
- rez ファイルがあれば「璃樹無」
たとえば「Longinus(愛称:でんこ)」(fuli氏)は今でも手に入る。
アプリを閉じる時に決まって出るアイコンにもニヤリする同胞も多いはず。
掲示板に書かれている文面は次のような内容。
あぷしてみた。どぞ。
杉P 今日の2
これは、
2ちゃんねるプロバイダー「おすぎとピーコ」にパスワードを今日の暦でアップしました
ということを意味する。
この時代はアップローダーも多く乱立。
この辺りの歴史は以前のブログで書いている。
おわりに
こうして書き出すと
たった3年程度
の期間だったけど、非常に濃厚な体験をさせてもらった。
ちょうど大学1年、2年、3年……という時期だったのも拍車をかけた気がする。
「ググれカス」という言葉が流行ったが、今の検索上位に出るのがアフィばかりで「ググったらカス」状態。
そしてTwitterでリアルな情報が得られるかと思えば、個人のフリしたステマ垢やアフィ、お金配ります等有害アカウントやまとめサイトへの誘導だらけ。
名前も分からぬ神がソフト公開してた時代と比べると、今は糞な時代になった。
なお、この日記を書くにあたって、僕の専攻は人工知能(AI)だったので「マルチを作る事」を目的として入学したオタクが何人かいたことを思い出した。
今では
- 会話面ではOpenAIの「ChatGPT」
- 外形は「オリエント工業」
- 機動はボストン・ダイナミクスの「アトラス」
でヒューマノイド メイド ロボットを作れるんじゃない?