合意形成(コンセンサス)ゲームの問題内容と模範解答例

会議や打ち合わせで人と議論した際に、なぜ人と意見が違う(異なる)のだろう?

 

これには4つの要因があるとされる。

  • 持っている情報の違い
  • 情報の解釈違い
  • 目的の違い
  • 価値観の違い

 

このうち、情報と解釈は話をする中で比較的共有されやすい。

一方で目的価値観は他の人も自分と同じだろうというバイアス(思い込み)が働き、共有されづらい傾向がある。

ビジネスの世界では、目的がずれてしまうとやり直し作業が発生し、無駄足を踏むことになる。

つまり、

 

合意形成とは「目的に合意すること」

 

なお、情報や解釈はコミュニケーションの中で早めに共有することが大事。

今まで多くのセミナー・研修に参加してきた。

いわゆる「研修マニア」ってやつだ。

【研修マニア(会議マニア)】

会議や研修をしていることで満足している人のこと。
会議や研修そのものが、目的となっている人のこと。

役に立ったと思えるものって殆ど無いけどね。

 

そんな中、社内研修や人材育成、チームビルディングの構築などの研修・セミナーで時々出題される質問がある。

 

「遭難した時に持っていくもの」に何を持っていくか順位をつけろ

 

調べてみると「コンセンサスゲーム」という有名なものだった。

 

コンセンサスゲームのお題(設問)は何種類かあるが、これらのお題はもともとNASAが社員研修用に開発した「NASAゲーム(月での遭難)」に由来とのこと。

  • 砂漠で遭難
  • 月で遭難
  • 雪山で遭難(ウィンターサバイバル)

※ 他にも「帰宅困難サバイバル」「船長の判断」「無人島での出来事」「聖夜のケーキ店」などがある。

そして、専門家による答えも決まっているらしい。

NASAゲーム 砂漠からの脱出 雪山での遭難
設定 月での遭難 砂漠での遭難 雪山での遭難
アイテム数 15個 12個 10個
模範解答 NASAによる模範解答 専門家による模範解答 専門家による模範解答

 

「俺って中学校の頃から瀬戸内海の小島に渡って、釣り竿だけもって数日暮らしたからね」

 

とかセミナー中に得意げな顔してウンチク語っていた自分が恥ずかしい……。

私が参加した研修では「答えの正しさは不要」で、正解を知らずじまいだったのでまとめておく。

コンセンサスゲームの流れと模範解答

このゲームで本来学んで欲しい点は「グループでの方針決定がいかに早くできたか

 

コンセンサスゲームという名の通り、最終的な目的はグループ内での「コンセンサス(=同意)」がいかに円滑・正確に取れたかが試されるもの。

脱出に必要なアイテムの優先順位を検討する前に、まずはグループとして、

  • どうやって脱出するか
  • どうやって生還するか

をみんなで話合う。

まずは、この部分について、グループのコンセンサス(合意形成)をしっかり行う。

これには色々な要素が必要。

  • 「街まで歩くのか、助けを待つか」という行動方針が決められたか
  • 進行、タイムキーパー、書記、発表など、役割分担ができたか
  • 時間内に、1~12品目の順番と理由という成果がきちんと納められたか

 

これらは複数人で協力して成果を出すビジネスの場面で必要不可欠なことと同じ。

採用面接でやるグループワークでは当たり前のように役割分担するよね?研修でやる人は見たこと無いけど。

  • 個々の意見だしを取りまとめるリーダー
  • 答えと理由を記録する書記
  • 時間内に意見をまとめるためのタイムキーパー
  • 簡潔に決まったことをスピーチする発表者

なお、点数化は次のように計算する。

【得点計算の方法】

各アイテムの模範解答順位から、グループの回答順位を引く。

例:模範解答6位−グル – プ回答9位 = -3 (絶対値は3)

全ての絶対値を合計し、グループ合計点数の小さいチームが勝利

では、それぞれのゲーム内容と模範解答を見てみよう。

コンセンサスゲーム「砂漠で遭難」

問題は次のとおり。

みなさんは、社員旅行でアメリカ・ラスベガスに来ました。この日は、モハーベ砂漠の空中周遊ツアーに参加します。

7月中旬の午前10時ごろ、みなさんが乗ったプロペラ機は突然のエンジントラブルにより、砂漠の真ん中に不時着しました。これにより乗っていた飛行機は大破炎上し、操縦士と副操縦士は亡くなりました。ですが、みなさんは奇跡的に無事でした。不時着は突然のことで、救援信号も、現在位置の交信をする時間もありませんでした。不時着する直前に、操縦士は飛行プランのコースから大きく離れていることと、最も近い街が約 110km 南南西にあることを告げていました。

この付近は、平らでサボテンが生えている他は不毛の地域です。朝の天気予報では「最高気温は43℃になる」とのこと。それは地表近くでは、実に約70℃になるという事を意味しています。みなさんは半袖シャツ・ズボン・靴下・スニーカーという軽装で、ハンカチとサングラス、わずかの小銭しか持っていませんでした。

しかし飛行機が燃えてしまう前に、みなさんは12のアイテムをなんとか取り出すことができました。次の12のアイテムを、あなたが生き残るために最も重要と思われるものから順に、1から12まで順位をつけてください。

絶体絶命な状況にチームで陥るというテーマになっている。

12のアイテム

  • 懐中電灯
  • 食塩
  • この地域の航空写真
  • 1人1リットルの水
  • ビニール傘
  • 本「砂漠の食用動物」
  • 方位磁石
  • 1人1着の軽装コート
  • 45口径のピストルと弾薬
  • 化粧用の鏡
  • 赤と白のパラシュート
  • 約2リットルのウォッカ

「砂漠で遭難」の模範解答

ピンチの状況で最も生存の可能性が上がる12のアイテムの順番がすでに決まっている。

考え方としては、

  • 救助を待つ
  • 街まで移動する

の2種類があるが、どの問題でも

救助を待つ

が正解。

そのために

捜索隊へ如何に知らせるか?

の順に並べれば良い。

順位 アイテム 理由
1 化粧用の鏡 鏡はかなり遠距離まで光が届き、捜索隊への信号になる
2 軽装コート 太陽光線を浴びないようにする。夜の寒さよけにも
3 1人1リットルの水 生存には不可欠だが、救助を待つのが前提
4 懐中電灯 夜の救助に光を使ってしらせる
5 赤と白のパラシュート 広げると空からの目印になる
6 ビニール傘 砂嵐から身を守るため
7 ピストル 拳銃の音で知らせるため。動物に襲われそうになったら射殺する
8 方位磁石 町に向かう用。捜索隊に早期発見されるためには役に立たない
9 この地域の航空写真 砂漠は目印がなく、現在地の特定が難しい
10 本「砂漠の食用動物」 動物を捕まえると体力を消耗する
11 約2リットルのウォッカ 余計に喉が渇き、脱水症状になる
12 食塩 塩を摂取すると血液濃度があがる。喉が渇き、脱水症状を促進してしまう

コンセンサスゲーム「雪山で遭難」

あとは同じ話なので、簡単に紹介。

みなさんは雪山に不時着したスキー客です。
あなたの乗っている飛行機が、アメリカとカナダの国境付近の雪山に墜落しました。
残念ながら操縦士たちは死亡。機体は湖の底に沈没したようです。

しかし、幸いなことにあなた達10名は、無傷で飛行機からの脱出に成功しています。

墜落地点から一番近い街は、ここから32キロ離れたところにあります。

このあたりの夜の気温は最大でマイナス40度まで下がります。
周りを見渡すと、枯れ木が沢山落ちていることがわかります。

あなた達10名が生き残るため、以下のうちから重要な順に順位をつけてください。

10のアイテム

  • ライフル銃1丁
  • 大箱のマッチ1箱
  • 5日分の朝刊
  • 方向のわかる磁石1個
  • スキーセット1組
  • 20㎝のナイフ1個
  • 板チョコレート10個
  • 大型の懐中電灯1個
  • ウィスキーの入ったびん1つ
  • 固形の油の入った金属缶1個

「雪山で遭難」の模範解答

サバイバルの専門家の解答は「助けを待つ」。

人里を目指して、雪山を32㎞も行軍するのは困難
寒さを防ぎながら、捜索隊の救助を待つのがベター

順位 アイテム 理由
1 大箱入りのマッチ 枯れ木等に火をつけて、暖を取るために絶対必要。また明かりを生み出し捜索隊へ位置を知らせることもできる
2 板チョコ10枚 寒さをしのぐためのカロリー補給・エネルギー源として必要。板チョコ一枚(100g)でおよそ550キロカロリー
3 固形油の入った金属缶 固形油を体に塗ることによって寒さを防ぐことができる。燃料として使うこともできる。また、缶のふたで太陽を反射させることによって捜索隊への目印にもなる
4 大型懐中電灯 捜索隊に知らせる合図として役立つ。近くを移動する時にも便利。ただし、温度が低いので電池は通常と比べて長持ちしない
5 新聞紙朝刊5日分 火をつける時に役に立つ。また服の下に入れると寒さを防ぐ効果がある。大きく広げることにより、目印にももなる
6 ライフル一丁 捜索隊に知らせる時の音の合図として使える。しかし、野性動物を仕留めるのには熟練が必要なので、素人には難しい。極限状態になり、イライラしてくると殺し合いの凶器にもなるので危険
7 サバイバルナイフ 枝を切って薪をつくるぐらいしか利用価値はない。またライフル同様、殺し合いの凶器になる
8 スキーセット一式 助けを求めに行くのに使えそうですが、移動は危険なので必要度は高くない。旗を立てる棒や燃やす材料ぐらいには使える
9 ウイスキーひと瓶 飲めば体が温まると言う意見もありますが、それは間違い。実際は、眠くなるので危険。消毒薬の代わりとしては使える
10 方位磁石 移動する時に使えそうですが、移動せず助けを待つので、実際は何の役にも立たない

コンセンサスゲーム「月で遭難」

あなたがたは、月旅行宇宙船のメンバーです。
計画では、明るい方の月面上で、迎えに来る母船と落ち合うことになっていました。ところが、あなたがたの宇宙船は、機械の故障によって着陸予定地点(母船と落ち合う地点)から 200 キロメートル離れたところに着陸してしまいました。

もう宇宙船を動かすことはできず、生存したいならば、あなたがたはどうにかして母船の着陸地点に辿り着かなければなりません。
そこで、月面上 200 キロメートルの旅行に携行するのに必要な品物を選択する必要に迫られています。
母船のある地点に到着するための必要度(重要度)に応じて、破損を免れ完全なままで残った右の 15 の品物に順位をつけて、その順位を①の空欄に記入してください

15のアイテム

  • マッチ(箱付き)
  • 宇宙食
  • ナイロン製ロープ(15m)
  • パラシュート
  • ソーラー発電式携帯用ヒーター
  • 45口径ピストル(2丁)
  • 粉ミルク(1箱)
  • 酸素ボンベ(2本)
  • 月面用の星座表
  • 自動で膨らむ救命ボート
  • 方位磁石
  • 水(20リットル)
  • 照明弾
  • 注射器入り救急箱
  • ソーラー発電式FM送受信機

「月で遭難」の模範解答

順位 アイテム 理由
1 酸素ボンベ 酸素は、人が生きていく上で絶対に必要です。重力が小さいため重さは考慮する必要がありません。
2 水も人が生きていく上で絶対に必要ですね。特に日光があたる月面では大量の水分が失われるので水分補給が欠かせない
3 月面用の星座表 母艦に向かうとき等、進むべき方向を確かめるのに必要です
4 宇宙食 エネルギーを補給するために必要です
5 ソーラー発電式FM送受信機 母船との通信に使うことができます。ただし距離が離れていると通信は困難です。近距離での通信しかできません
6 ナイロン製ロープ 崖の高さを測定したり、けが人の運搬に使うことができます
7 注射器入り救急箱 宇宙服の特殊孔からビタミン剤や薬を注入することができます
8 パラシュート 物を運ぶ時や日よけに使用できます
9 自動的に膨らむ救命ボート 運搬、日よけ、ガスが推進力になります
10 照明弾 母船が見えた時に避難信号を送れます
11 45口径ピストル×2丁 発射の振動が推進力となります
12 粉ミルク×1ケース 宇宙食と重複します。使うには水が必要です
13 ソーラー発電式の携帯用ヒーター 月の温かさがあるので、陽が当たらないときのみ有効です
14 方位磁石 月では磁気が無いので意味がありません
15 箱に入ったマッチ 酸素が無い宇宙では使えません

おわりに

因みに、コンセンサスゲームの使い方は色々とある。

私が参加した「FFS理論セミナー」では純粋に各パターンに合った人がどのような行動を取るのか?を説明するために使われた。

【FFS理論】

チームを編成するにあたって、そのチームの個々のメンバー特性を理解したうえでそれぞれのメンバーが持つ強みや弱みを客観的に把握する手法

 

要するに、リーダーに向いている人、分析が得意な人、外交/内交が得意な人と色々といるから、全員に「方針決定がいかに早くできた」事を目的として課しちゃ駄目。

というコンセンサスゲームを完全否定するような内容だったけどね。

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