中国人の知らない中国の諺「永遠に幸せになりたかったら、釣りを覚えなさい」の真実

本日も調子にのって釣りに行ったら、速攻でトリックサビキの仕掛けが切れて損失。

何だよクソが、千葉で釣りを再開してからボウズばかりじゃねぇかよ。

ボウズだと日記にならないんだよ・・・。

海が汚くて魚が少な過ぎるんじゃないのか・・・。

ちっとも、面白くない・・・・。

 
 

中国に伝わる古い諺(ことわざ)がある。

 一時間、幸せになりたかったら酒を飲みなさい。
 三日間、幸せになりたかったら結婚しなさい。
 八日間、幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい。
 永遠に、幸せになりたかったら・・・ 釣りを覚えなさい。

 
 

これは、なんだか格言めいており、カッコいい。

釣りを全肯定しているので、釣り人には結構人気のある言葉だ。

酒の酔いはいつか醒めて空しさが残り、結婚だって倦怠期もくるが、釣りだけは飽きることがない・・・。
 
 

でも、ちょっと冷静になろう。

 
 

 
 

「釣り」を覚えたぐらいで、一生幸せになれるのか?

 
 

一日ならまだしも、一生だよ、一生。。

だったら、漁師なんて幸せ過ぎで死んじゃうだろ・・・・。

 
 

更に、もう一つの疑問。

 
 

これって本当に「中国古諺」なの?

 
 

古い語源は、何でもかんでも
 
 
 
中国起源説
 
 
 
ってよくやるよね、だって歴史長いから。

 
 

だったら、職場の中国人に直接聞いてみよ~っと。

その返答はこうだった。

私は、この中国の諺を聞いたことがありません。
釣りに興味がある中国籍の友人にも聞きましたが、友人も知らなかったです。

ネットで検索して、全く同じ諺もなさそうです。

色々と怪しくなってきたので、調査してみる。

1978年「オーパ!」(開高健)が発端

あまり知られてないけど、この言葉が有名となったのは芥川賞受賞作家・開高健(かいこう・たけし)の「オーパ!」で中国古諺として紹介したからだ。

 
 

[引用] 『オーパ!』高橋昇写真 集英社、1978

 
 

うーん、芥川賞受賞作家だったら、そんな粋なコトワザはひょいひょいと作ってしまうんじゃ無いのかな……。

2006年 「長靴を履いた開高健」(滝田 誠一郎)に続きが載っている

開高健の記載した諺に、異を唱える書籍を見つけた。

後年、阿川弘之提督の紹介で知り合った船坂真一氏に依頼をし、三井物産香港支店長経験のある同氏の香港人脈を総動員して調べてもらったところ、中国では“一時間、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい”というのだということが判明。その知らせを船坂氏からもらった小説家は、折り返しの返信のなかで《私が中国古諺として十九世紀のイギリスの本で読んだときは、永遠に幸せになりたかったら釣りをおぼえろ、となっていたのだが、本場では一時間幸せになりたかったら、となっているのを知って、オドロキと微苦笑。

[引用] 長靴を履いた開高健


 
 

 
 

分かったことは、
 
 

中国では「一時間、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい」となっている。

19世紀のイギリスの本に「中国の諺『永遠に幸せになりたかったら釣りをおぼえろ』」と書いてあった。

 

そして、「オーパ!」にあったのは 釣り だった。

 
 

語源を調べるには、英語のことわざ辞典まで調べる必要があるのか

長い調査になりそうだ……。

1975年 三省堂の英語ことわざ辞典に類似諺が載っている

次の3つの諺(ことわざ)が載っていた。

いずれも17世紀中期の作とある。

Who intends to have a good month, let him to the bath;
a good year, let him marry;
a good week, let him kill a hog;
who will be happy always, let him turn priest.

楽しく一月過ごしたい者は湯治に行くがよい。
一年なら結婚、
一週間なら豚を殺すがよい。
また、いつも幸せでいたければ牧師になるがよい

異型表現として次のものが掲載されている。

 Let him that would be happy for a day, go to the barber;
 for a week, marry a wife;
 for a month, buy him a new horse;
 for a year, build him a new house;
 for all his lifetime, be an honest man.
 幸せでいたいのが
 一日なら、床屋へ行け。
 一週間なら、結婚せよ。
 一月なら、新しく馬を買え。
 一年なら、新しく家を建てよ。
 一生涯なら、正直人間になれ。

 If you would live well for a week, kill a hog;
 if you would live well for a month, marry;
 if you would live well all your life, turn priest.
 一週間楽しく暮らしたいなら、豚を料理せよ。
 一月楽しく暮らしたければ、結婚せよ。
 死ぬまで幸せでいたければ、牧師になれ。

この諺は「牧師になれ」「正直でいろ」となっている。

もはや「釣り」なんて文字は出てきていないが、形式が似ているので、とりあえず出典を追いかけてみる。

1970年 The Oxford Dictionary of Proverbsに出典元が載っていた

次に「三省堂の英語ことわざ辞典」の参考文献だった「The Oxford Dictionary of Proverbs」を確認してみる。

1661 T.FULLER Worthies Wales 6 I say the Italian-humor, who have a merry Proverb.

Let him that would be happy for a day, go to the barber;
for a week, marry a wife ;
for a month, buy him a new horse ;
for a year, build him a new house;
for all his life time, be an honest-man

 幸せでいたいのが
 一日なら、床屋へ行け。
 一週間なら、結婚せよ。
 一月なら、新しく馬を買え。
 一年なら、新しく家を建てよ。
 一生涯なら、正直人間になれ。

イタリアの諺として、1661年の書籍が紹介されていた!

一気に300年以上さかのぼれる、やった!

1661年 The History of the Worthies of England(Thomas Fuller)が最古

イギリスの牧師で歴史家の Thomas Fuller (1601-1661) が著書 “The History of the Worthies of England” [Google Books p.487]

I say the Italian humour, who have a merry proverb,
” Let him that would be happy for a day, go to the barber;
for a week, marry a wife ;
for a month, buy him a new horse ;
for a year, build him a new house;
for all his life time, be an honest-man.”….

愉快なことわざを持つイタリア人のユーモアをいう。

一日幸せでいたかったら床屋に行きなさい
一週間幸せでいたいなら妻を娶りなさい
一ヶ月幸せでいたいなら馬を買いなさい
一年幸せになりたいなら家を建てなさい
そして一生幸せでいたいのなら正直に生きなさい

おそらくこれが一番古くて出典が確か。

 
 

1661年には、イタリア人の諺として親しまれていた

 
 

ただ・・・・、この牧師が作った言葉じゃなさそうだし、

「釣り」のクダリはどこにいったのさ。。

各国の似た諺(ことわざ)を調べてみる

世界中に存在することが分かった。

今度は、Google翻訳を駆使して各国の諺(ことわざ)と引用先を調べてみよう。

 
 

ここまで読んでくれている紳士淑女の皆様は、きっと最後まで付き合ってれると信じてる!

中国の諺(ことわざ)説

それらしい英単語を並べて検索すると海外サイトでも「中国起源説」は大人気。

1966年 「Some Ancient Gentleman」(Tyler Whittle)

古代中国のことわざとして次の文章が紹介されている。

In Some Ancient Gentleman, Tyler Whittle gives a gardener plenty to ponder with the ancient Chinese proverb:

If you wish to be happy for a day, get drunk.
If you wish to be happy for a week, kill a pig
If you wish to be happy for a month, get married
If you wish to be happy forever and ever, make a garden.

「Some Ancient Gentleman」では、タイラー・ウィトルは、古代中国のことわざで庭師に多くのことを考えさせてくれます。

一日、幸せになりたかったら、酒を飲みなさい。
一週間、幸せになりたかったら、豚を殺しなさい。
一ヶ月間、幸せになりたかったら、結婚しなさい。
永遠に、幸せになりたかったら・・・ 庭を作りなさい。

最後が「庭を作りなさい」になっているが構成は同じだ。

 
 

こっちでは「庭師」か・・・・。

そもそも、古代の中国人って庭作りの趣味あったかな・・・。

 
 

なんでも「古来中国」にすれば良い説

 
 
は世界中に存在するようだ。

1994年 More Random Acts of Kindness には釣りの記載あり

釣りに関する記載も見つけた。

If you want happiness for an hour — take a nap.
If you want happiness for a day — go fishing.
If you want happiness for a month — get married.
If you want happiness for a year — inherit a fortune.
If you want happiness for a lifetime — help someone else.

— Chinese proverb

一時間の幸せが欲しければ、昼寝をしなさい。
一日の幸せが欲しければ、釣りに行きなさい。
一ヶ月の幸せが欲しければ、結婚しなさい。
一年の幸せが欲しければ、財産を相続しなさい。
一生の幸せが欲しければ、誰かを助けましょう。

中国のことわざ

More Random Acts of Kindness – 55 ページ
The Editors of Conari Press
1994年

ここでは「一日、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい」となっている。

色々なバージョンがありすぎるな、しんどい。

2013年 「樂商」任俊著は唯一の中国語

唯一「中国語」で書かれた書籍を見つけた。

努力去做善事
做善事可以增加人的快乐已经被多个心理学研究报告证实了,人许多时候的不快乐主要是由于自私心和贪欲,而利他行为是有效对抗自私和贪欲的最有效武器
目前心理学的研究结果可以简单概括为:
如果你想快乐一小时, 就去睡个午觉
如果你想快乐一整天, 就去钓鱼
如果你想快乐一个月, 就去结婚
如果你想快乐一辈子, 那就去帮助别人吧

良いことをするようにしてください
善行を行うことは、人々の幸福を高めることができますいくつかの心理学的研究によって証明されている、何度も人々は主に利己主義と強欲のために不幸であり、利他的な行動は利己主義と強欲に対して最も効果的な武器です。
現在の心理学研究の成果を簡単にまとめると以下のようになります。

一時間、幸せになりたいなら、昼寝をしましょう。
一日、幸せになりたいなら、釣りに行きましょう。
一ヶ月、幸せになりたいなら、結婚しなさい。
一生、幸せになりたいなら、人助けをしましょう。

樂商
著者: 任俊著
清華大學出版社
2013年

釣りの記載があった!

しかし、この諺の出典は全く分からない・・・。

1661年 イタリアの諺(ことわざ)は今のところ最古

既に前述しているが、1661年に出版されており、今のところ最古だ。

2015年「Old Heart: A Novel」(Peter Ferry)オランダの諺(ことわざ)

There’s a Dutch proverb that says,

If you want to be happy for a day, get drunk.
If you want to be happy for a year, get married.
But if you want to be happy for a lifetime, plant a garden.

オランダの諺がある。

一日、幸せになりたかったら、酒を飲みなさい。
一年間、幸せになりたかったら、結婚しなさい。
永遠に、幸せになりたかったら、庭を作りなさい。

Old Heart: A Novel

Peter Ferry (著)
発売日 : 2015/6/9
 
 

出版が新しいので、どっかで聞いた話を書いただけな気がするな。

2002年 「Authentic Happiness」Martin Seligman アメリカの諺

中国の書籍の中で、「中国の諺」ではなく「アメリカ人心理学者「マーティン・セリグマン」」の言葉として紹介されている。

NOTE
如果你想快樂一小時,就睡個午覺;
想快樂一天,就去釣魚;
想快樂一個月,就去結婚;
想快樂一年,就繼承一筆遺產;
想快樂一輩子,就去幫助別人。
-馬丁‧賽利格曼(Martin E.P. Seligman, 1942~)
美國正向心理學家

一時間、幸せになりたいなら、昼寝をしましょう。
一日、幸せになりたいなら、釣りに行けばいい。
一ヶ月、幸せになりたいなら、結婚しなさい。
一年間、幸せになりたいなら、遺産を相続しましょう。
一生、幸せになりたいなら、人助けに行ってください。

練習不快樂?!: 不快樂是一種本能,快樂是一種選擇
著者: 蘇益賢
2019年

 
 

歴史が長いのに、その歴史に興味が無いのかな・・・中国人は。

プライドを持て、プライドを!

この諺は、君らの諺だとアメリカ人は言ってるぞ!!

1820年 Tracts「古いことわざ」としか書いてない

If you would live well for a week , kill a hog ;
if you would live well for a month , marry ;
if you would live well all your life , turn priest .”

This is an old proverb ; but by turning priest is not barely meant become an ecclesiastic , but it alludes to the celibacy of the Romish Clergy, and has a pungent sense, as much as to say, do not marry at all.

一週間、幸せに生きたいなら、豚を殺しなさい。
一ヶ月、幸せに生きたいならば、結婚しなさい。
一生、幸せに生きたいならば、司祭になりなさい。

これは古いことわざですが、「司祭になる」ことは、かろうじて聖職者になることを意味するのではなく、ローマ聖職者の独身を暗示しており、「全く結婚しないでください」と言っているのと同じくらい刺激的な意味を持っています。

出典は「古い諺」となっている。

「司祭」は新しい。司祭になると一生幸せなのか分からないが・・・・。

まとめ

色々と大変だった・・・・。

世界中に同じような諺(ことわざ)が存在することが分かった。

そして原文は「釣り」では無さそうだ。

TPOに応じて、適当なアレンジがされている。

 
 

【賞味期限まとめ】

酒・・・一時間
昼寝・・・一時間
床屋・・・一日間
結婚・・・三日~一ヶ月
豚食べる・・・一週間~八日間
湯治に行く・・・一ヶ月
馬購入・・・一ヶ月
家購入・・・一年間
相続・・・一年間
釣り・・・一日~永遠/一生
正直でいる・・・一生
誰かを助ける・・・一生
司祭になる・・・一生
牧師になる・・・一生
庭造り・・・一生

 
 

で、結論

「釣り」で一生の幸せは得られない

 
 

当たり前だよ!連日のボウズでちっとも楽しくない!

 
 

因みに、釣りに関する格言は下記も有名なので調べてみた。

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