ある投資セミナーで次のような質問があった。
複利について教えてください。
S&P500に一括投資した場合、元金が変わらないので単純に基準価格の変動によるキャピタルゲインした内容に思えるのですが、複利はどのように考えればよろしいのでしょうか?
講師はしどろもどろになりながら
単利は毎年利益を取り出し100万円を継続運用するという考えです。
複利は、例えば100万円が来年110万円になると、その10万円に対しても利益がつきます。
つまり普通に長期投資で置いておくと複利という形で増えていくと考えて貰えれば幸いです。
詳細が知りたい方は個別相談にお越し下さい。
と言った。
悪いけどインデックス投資に「複利」なんてないから!
- 利子にもまた利子がつくこと
- 利息を元本に組み入れ、その合計を次の期間の利息計算で元本とする金利の計算方法
質問者の疑問は正しい。
なぜなら投資におけるリターンは「買った時と売った時の差」だから。
「複利」とは、一定の利率で利息が付き、その利息も再投資される場合に使う概念。
例えば、S&P500インデックス指標が10年で1,000円から6,000円になった。
10年前に1,000円でS&P500インデックス投資信託を購入した場合、現在は6,000円になっており「5,000円」得したと計算できる。
ここに複利効果は存在しない。
そしてS&P500やオルカンなどのインデックス型投資信託は基本的に「分配金なし」なので口数も増えない。
この事を証券会社が「知らぬ存ぜぬ」はありえない。
こんな重要なことを、疑問に持たず、調べず、事なかれ主義で、ずっとセミナー講師をしている企業・人物は無責任な体質ということが分かる。
SNSでも一年前に話題になり賛否両論が飛び交った。
ただ、それに反対する意見もある(おりおりちゃんねる)。
まとめると、今福氏(楽天証券のコラム)の主張は次のとおり。
- 投資には厳密な意味での「複利効果」はない。
- 投資のリターンは単純に購入価格と売却価格の差。
- 「複利」という言葉を安易に使用することで、投資の本質が誤解される可能性がある。
おりおりちゃんねるの主張は次のとおり。
- 投資の期待値としての増え方は実質的に複利と同じ。
- 企業の内部留保や再投資により、長期的には複利的な成長が期待できる。
- 「複利効果」という言葉は厳密には不正確かもしれないが、投資の長期的な成長パターンを説明するのに有用。
厳密な定義では今福氏の主張が正確。
インデックス投資には定義上の複利はない。
※ 分配金再投資の商品に限り複利効果という「複利のようなモノ」がある
というのが正しい説明。これを未だに知らないセミナー講師がよく話ができるよね……。
YouTubeでも沢山の動画が上がってる。
「投資信託で複利の話をするからややこしくなる」と言ってる人もいた。
今回のブログで言いたいことは伝えた。
最後に今福氏(楽天証券のコラム)の主張を噛み砕いて掲載しておく。
株式の配当金があるから複利効果が働くのでは?
長期的に見ると、配当金の再投資が資産増加に貢献することがある。
これは事実だ。
だけど、株式の配当金などは、もともと投資信託の中で再投資されるもの。
複利効果と呼ぶものではない。
投資信託内部で売買益や配当利益を再投資して自動的に再投資されている。
これは単に投資信託の運用の一部として行われている当たり前の実務。
株式投資ではどちらかというと「再投資効果」と言うべき。
再投資コースを選ぶかによって複利効果が働くのでは?
再投資コースを選ぶことで、長期的に資産が増加する可能性は高まる。
しかし、これは「複利効果」ではない。
単に投資額を増やし、市場の成長に参加し続ける機会を得ているだけ。
つまり、インデックス型の投資信託は利益を再投資してさらに利益を生むが、
それはファンドの成長であって、個人のリターンはあくまで「買った時と売った時の差」。
おわりに
インデックス投資には複利は無い。
利息に利息が付くという複利は、
利回りが確定した商品(預金や債券など)にしか使えない考え方
インデックス投資では長期的には元本だけでなく利益部分も投資に回っていく。
この現象が複利に似ているためプロやインフルエンサーですら「複利効果」と勘違いしている人がいる。
長期投資の人が多額のリターンを得てるのは複利効果などではなく、投資対象が単純に右肩上がりだったから。
投資の複利に関する誇大広告や、投資シミュレーションに惑わされることなく、本質を見極めることが大切。