その日人類は思い出した
ヤツらに支配されていた恐怖を‥‥
鳥籠の中に囚われていた屈辱を‥‥‥
[引用] 諫山創 / 進撃の巨人
23時過ぎにスマホが鳴った。
緊急地震速報だ。
2011年(平成23年)3月11日14時46分ごろマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震(気象庁)が発生した。
過去の事だと思い過ごしだが、10年経過した地震の余震が今もなお続いていることを意味する。
コロナといい、地震といい、ヒトは進化の頂点でも完全な存在でもないことを再認識させられた。
「進撃の巨人」でエレン達のいる「パラディ島」の人々の良くないところは、過去の事実の真相を一部の人が独占・隠蔽したことだと思う。
そこで進化が停滞し退化していた。
幸い、現実の人類はそこまで馬鹿じゃない。
多くの人々が日記を執筆し、当時の状況を鮮明に、場合によって死の瀬戸際まで知ることができる。
しかし、自分の日記の多くは事実のみが記載され、心理や情景は感じ取れない。
地震当日の日記ですら、まるで鉛の兵隊が書いた文章のように心情を読み取ることができなかった。
幸い、未だに当時の状況を覚えているので、改めて10年前の地震発生当時の状況を残しておく。
日記を読んで下さる物好きな人は、少々の間 お付き合い願いたい。
あの日、僕に何があったか?
10年前ということで、多少の当時の機密情報も含めている。
地震が発生する前(14時00分)
ちょうど30歳。
結婚はしてなかったが、田端新町の築40年のボロアパートで今の相方と同棲を開始した。
仕事面では、突然部長に呼ばれて強制的に異動となり、Googleと組んだ極秘プロジェクト(GoogleTV開発)に参画させられた。
糞みたいな理由で立ちあがったプロジェクトで、社内でシェア争いを起こしてしまい3年後に社長が変わって即座に頓挫したけどね。
どれくらい糞かは、マイクロソフトでWindows 95/98のチーフアーキテクトとして君臨した中島聡氏のブログを読めば分かる。
衝撃の記事だったので開発部署内にブロードキャストしたわww。
だって 書かれている内容通りの目的・内容だったもん。
(ここに書いてあることは、すべてフィクションである。万が一同じような会話が実際の現場で行われていたとしても、それは単なる偶然の一致なのでそこはご了承いただきたい。)
www。
いやいや、注釈の書き方としてもオカシイだろ!誰だよ リークしたユダ野郎は?
今ならプロジェクトの糞さを事業部長に進言するところだが、当時の僕は部長どころか課長とすら面談以外で会話をしたことが無かったからね。
さて、時間を2011年(平成23年)3月11日14時46分前に戻そう。
この日は14時から10年以上年の離れたリーダーと二人でオープンスペースで進捗報告をしていた。
この会議が酷いのなんのって・・・・。
リーダー「え?まだ完成してないの?社会人として終わってるよ?」
リーダー「今日が完成と君の計画は書いてあるよね?どうするの?責任とってよ?」
今になって思い起こすと、この人はエンジニアスキルは高いがリーダーの素質は無い。
ロジックも破綻。「鼻血を出すまで働け」という糞のような部長の精神論崇拝者だった。
地震が発生した直後(14時46分)
人間否定されるまで罵倒され、真っ黒な海の底へ落ちていくような気分を味わっている最中に、大きな揺れが発生した。
私「・・・結構強く揺れてませんか?皆、机の下に隠れ始めてますよ?」
リーダー「そんなのどうだって良いだろ?今日、終わるまで帰れないから!」
思い出すだけでもムカつく業務命令だが、心で泣きじゃくりながらも指示に従った。
ミーティングが終了してからは、黙々とプログラミングだ。
そもそも間食もコーヒーも飲まないし職場には話し相手もいない。そしてリーダーに睨まれるからネットサーフィンもしないので、地震の状況など知る由もない。
それでも、地震の話題について周囲の社員達が話している事ぐらいは何となく分かっていた。
地震が発生3時間後(17時00分)
黙々とC++言語で実装だ。
「今日、終わらせないといけない・・・、僕は駄目なヤツなんだ・・・・僕は・・・・」
そんな心理状況だから、生産性も何もない。そもそもプログラミングスキルは高くないので、すぐに手が止まる。
自身の不甲斐なさに涙がとめどなく流れてきた。子供のように泣きじゃくっていた。
後輩「先輩、こんな状況で~何をしてるんですか~?地震で大騒ぎっすよ~?」
突然、後ろからあっけらかんとした口調の声がする。
私「何って?実装だよ。今日が締切なんだよ。」
時間も無いので目を向けず、そっけない言葉を返した。
後輩「いや、そんな場合じゃ無いっすよ?大地震ですよ?」
私「大地震なら副業収入が入るから嬉しい限り。」
後輩「え?それってどういう事ですか?」
私「このままだと、リーダーから大地震のような剣幕が僕に落ちてくるよ・・・・」
後輩「いや、そんなレベルじゃないっす。まじ半端ないっす。ニュース見て下さい、ほら?」
幸いテレビだけは、どの机にも数台置いてある。
テレビをつけると、そこには阿鼻叫喚地獄が現れた(映像はNHK World)。
17時を過ぎてようやく、この状況が尋常ではない事に気づいた。
地震が発生して帰路につくまで(22時28分)
気づいた時にはリーダーはとっくに帰ったらしい。こいつは、そんな野郎だよ。
そして締め切りも伸び、実装を本日中に完了する必要が無くなった。
社食も中止、コンビニは売り切れ、非常食の配給も行われた。
そして、完全に置き去りにしていた相方の存在。
当時はガラケー。LINEのようなものも存在しない。
メールのやり取りはその前からしていたのかもしれないが、「20時53分」にPHPのチャットを自サーバーに立ち上げて会話を始めたことが当時の更新日時より読み取れる。
そして多くの路線が止まっている中「22時28分」に帰路についた。
片道30分の帰宅時間が、途中から徒歩となり3時間かかった。
状況を完全に把握したのは、翌日起きた土曜日だった。
まとめ
その後、後輩が この日の発言の意味を知りに何度か昼食に誘ってきた。
アフィリエイトのいろはを教えてやると、1年後に副業で年収4000万円となり、会社を辞めていった。
風のうわさでは、億を稼ぐようになり彼女にマンションの一室を買ってあげたらしい。
自サーバーにチャットを立ち上げた事もあり、今でも やり取り含めて全てのログが残っている。
路線が止まり会社に泊まるように指示があったと伝える僕。
女性一人残して、皆で楽しく会社に滞在している(ように見える)事に対して不満の相方。
思い出せば10年前の3月11日は色々あった。
当時の事を鮮明に伝えるログや更新履歴は、地震の発生した日でいつまでも止まったままだ。
人の心を除いて・・・。