プロテインは体重x2g&摂取タイミングは運動後45分までの誤解に対する誤解

「健康投資」に関しても「株式投資」と同じくらい嘘が蔓延はびこっている。

結論が出ていない事が多い分野だから理解はできるけど、インフルエンサーの知識情報がアップデートされていないのも大きな問題。

 

タンパク質の摂取目標値は自分の体重x2g

 

筋トレしている人はよく聞く言葉だ。

だけど、Morton RWらにより2018年に次のような研究結果が報告されている。

  • 食事やサプリメントからタンパク質を摂取することは、健康な成人が筋力トレーニングを行う際に、筋力と筋肉の成長を効果的に促進する。
  • ただし、年齢が高くなるとその効果は低下し、トレーニング経験が豊富な人ではより効果が大きくなる。
  • また、タンパク質摂取量が体重1.62 g/kg/日を超えても、筋肉量のさらなる増加には繋がらない

[引用] Morton RW, Murphy KT, McKellar SR, et al. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med. 2018;52:376-384. doi:10.1136/bjsports-2017-097608.

筋トレして体重 x 2g以上を摂取している人がすぐに「はい、そうですか。では止めます」とは言えないと思うけど。

本題はこっち。

 

筋トレ後のゴールデンタイムは「30分~45分以内」は間違いである

 

 

筋トレ後4時間程度は、タンパク質が吸収されやすい状態が続いている事が今までの研究で明らかになっています。

そのため、正しいゴールデンタイムは「筋トレ後4時間」です。

 

などと記載がある。

もっとも詳しく論文引用で記載があるのは東京医療保健大学 医療保健学部 医療栄養学科の御堂氏の下記のページ。

プロテインの必要量や摂取タイミングの誤解 | 東京医療保健大学
最近、レジスタンストレーニング(いわゆるウェイトトレーニングまたは筋トレ)が流行っているようです。ジムに行くと、栄養補助食品のプロテイン(日本語でタンパク質のこと)を横に置き、レジスタンストレーニングをしている若い人をしばしば目にするようになりました。このよう

ジムでは最後に30分のランニングをしてシャワー浴びて帰宅している。

このため30分~45分以内にプロテインを摂取は難しいので朗報だけど正しいのか論文を確認してみた。

Esmarck Bらの研究「タンパク質摂取のタイミングは、高齢者の筋トレによる筋肥大に重要」

Esmarck et al. (2001)によると、

 

筋トレ直後(5分以内)にタンパク質を摂取することは、2時間後に摂取するよりも筋肉の増加と筋力向上に効果的である

 

とされている。

[引用] Esmarck, B., Andersen, J. L., Olsen, S., Richter, E. A., Mizuno, M., & Kjær, M. (2001). Timing of postexercise protein intake is important for muscle hypertrophy with resistance training in elderly humans. *Journal of Physiology, 535*(1), 301-311.

この研究では、13名の高齢男性(平均年齢74歳)が12週間のトレーニングプログラムに参加し、トレーニング直後(5分以内、P0群)または2時間後(P2群)にタンパク質サプリメントを摂取して実験を行った。

【大腿四頭筋の断面積(CSA)】

  • トレーニング直後(5分以内、P0群)のプロテイン摂取: 7%増加
  • トレーニング2時間後(P2群)のプロテイン摂取: 有意な変化なし

【筋線維面積(MFA)】

  • トレーニング直後(5分以内、P0群)のプロテイン摂取: 22%増加
  • トレーニング2時間後(P2群)のプロテイン摂取: 有意な変化なし

 

「30分~45分以内」という記載はどこにもない。そして13名かつ高齢者に限定した実験となっている。

Morton RWらの研究「タンパク質補給が筋トレによる筋肉量と筋力の増加に与える影響」

Morton RWらによると

 

トレーニング前後のタンパク質摂取タイミングは、筋肉の成長やパフォーマンスに大きな影響を与えない

 

とされている。

[引用] Lak M, Bagheri R, Ghobadi H, et al. Timing matters? The effects of two different timing of high protein diets on body composition, muscular performance, and biochemical markers in resistance-trained males. Front Nutr. 2024;11:1397090. doi:10.3389/fnut.2024.1397090.

この研究では、40人の筋トレを行う男性(平均年齢24歳)を対象に8週間のトレーニングを実施(筋トレ前後3時間に体重1kgあたり2gのタンパク質を摂取するグループに分類)。

【結果】

  • 筋トレ3時間前、3時間後のグループともに、筋肉量、筋力、パフォーマンスが有意に向上
  • トレーニング前後のタンパク質摂取タイミングは、筋肉の成長やパフォーマンスに影響を与えなかった

 

だけど、運動後の30分~45分と比較した訳ではないので、必ずしもゴールデンタイムが否定できるとは限らない。

Wirth Jらの研究「運動後の筋肉タンパク質合成の持続時間」

Wirth Jらによると

 

タンパク質摂取のタイミング(運動後、運動前後、その他の時間帯)は、筋肉量の増加において統計的に有意な差は見られない

 

とされている。

 

[引用] Wirth J, Hillesheim E, Brennan L. The Role of Protein Intake and its Timing on Body Composition and Muscle Function in Healthy Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. J Nutr. 2020;150(6):1443-1460. doi:10.1093/jn/nxaa049.

この研究では、2,907人(男性1,514人、女性1,380人、性別不明13人:18~55歳の成人と55歳以上の高齢者)の研究結果を統合して分析した結果を報告している。

【結論】

  • 成人(18~55歳)では、1日あたり20gのタンパク質を12週間(約3ヶ月)摂取することで、平均0.62kgの筋肉量の増加が見られる
  • 高齢者の例では、1日あたり20gのタンパク質を24週間(約6ヶ月)摂取することで、平均0.46kgの筋肉量の増加が見られる
  • タンパク質摂取と運動を組み合わせることで、筋肉量の増加が最大化される
  • 筋肉量が増加しても、握力やレッグプレスの筋力が必ずしも向上するわけではない
  • タンパク質を摂取するタイミング(運動後、運動前後、その他の時間帯)は、筋肉量や筋力の増加に大きな影響を与えない

 

これも、運動後の30分~45分と比較した訳ではないので、必ずしもゴールデンタイムが否定できるとは限らない。

それより「1日あたり20gのタンパク質」って少なすぎ。

これが真であるなら「タンパク質の摂取」より「運動量」が主な筋肉量を増やす要因である可能性が高いのでは……。

おわりに

うーん、今回の調査では「30分~45分以内のタンパク質摂取が有効」を否定はしきれなかった。

 

ここまでの調査で言えること

 

運動後5分以内のタンパク質摂取は、2時間後に摂取するより有効

運動前2時間前、2時間後のタンパク質摂取は差がなく、1日全体のタンパク質摂取量が十分であれば良い

であり、Wirth Jらの研究まで含めてしまうと

筋力量アップには「タンパク質の摂取量」より「運動の有無」の要因の方が高い

 

となった……。本当なのかな。

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