「人間の寿命は120年」という説がある。
これは、俗に「命の回数券」とも言われるテロメアを使い切るのが120歳のころ、というのが理由。
しかしその一方、人間の脳は100年どころか200年でも、300年でも生きると主張する科学者もいる。
最近では次のような研究結果も発表された。
「1880年代以降に自然死した人間の寿命」を総合的に分析したジョージア州立大学のデイビッド・マッカーシー博士は「人間の寿命延長の推移から考えると、1970年代に生まれた人たちは最長で141歳まで生きられる」と説明した。マッカーシー氏は「1940年代に生まれた人は最長で125年まで生きられるだろう」とも予想した。
[朝鮮日報日本語版] 2023/04/02
アルトマン氏は2022年半ば、サンフランシスコ郊外に本社を置くレトロ・バイオレンス社という新興企業に、1億8000万ドル(約240億円)を投資したといわれている。
同社は人間の老化を食い止め、寿命を延ばすことをミッションにした組織で、欧米メディアの中には、同社の事業がうまくいけば「200歳まで生きることが夢ではなくなる」といった煽ったタイトルを掲げる記事もみられるほどだ。
もちろん、年齢を重ねれば重ねるほど脳は萎縮し、認知症などの障害がみられるリスクは高くなる。
アンパンマン作者「やなせたかし」氏(94歳)は
「来年までに俺は死ぬ。少しずつ身体が衰弱しているのが分かるんだ。まだ死にたくないよ」
と語って約4か月後の2013年10月13日、順天堂大学医学部附属順天堂医院で亡くなった。
90代になっても「生に対する執着心」というのは尽きない事が伺える。
一方の僕は、残りの人生をカウントしながら生きている。
10年前には「あとどのくらいですか?終わりメーカー」というWebサービスも作成した。
今年であれば 桜を見るたびに
「あと桜は37回しか見れないのか……」
と無念さに唇を噛み締めながら眺めている。
定期的に「不老不死」の研究状況を調査しようと思ったが、2018年の次のブログから大きな進展が無いのでお蔵入りになっていたテーマ……
けれど2023年3月12日、高田馬場の東京富士大学にて、堀江貴文氏、野田聖子元大臣、ベンチャー企業創業者、医師、歯科医師、研究者、美容家などの16名のメンバーを登壇者とし、講演会「不老不死の研究EXPO」が開催された。
さらに今年の週刊医学界新聞(通常号):第3499号で「老化研究発展の歴史」という特集も組まれた。
1882年 | 加齢に伴う「消耗した組織」が臓器不全の基礎となること(消耗仮説)が提唱される |
---|---|
1961年 | Hayflickらにより細胞分裂回数に限界があることが証明され,細胞老化の概念が提唱される |
1977年 | 低温下での生育や食餌の減量といった環境の変化によってセンチュウの寿命が延びることが明らかに |
1987年 | Greider,Blackburnによるテロメラーゼの発見 2009年にノーベル生理学・医学賞を受賞 |
1988年 | age-1がインスリン/IGF-1シグナル伝達経路に関係していることが解明される |
1997年 | 発がん性RASの発現が早期の細胞老化を誘導することを発見 |
2000年 | 出芽酵母のサーチュイン遺伝子であるSIR2が老化と寿命の制御に関連することを発見 |
2006年 | 体細胞の初期化に必要な遺伝子(通称:山中因子)が突き止められる |
2008年 | 炎症性タンパク質を細胞外へと分泌する現象がSASPと名付けられる |
2011年 | 老化細胞を選択的に排除すると,早老症マウスの老化様の症状が緩和・遅延されることをBakerらが初めて報告 |
2015年 | Kirklandらにより,老化細胞に細胞死を誘導し治療標的とするsenolyticsが提唱される |
2016年 | 体細胞を生体内で多能性に初期化できることが示される |
2020年 | Sinclairが,リプログラミング技術による軸索の再生を発表 |
2021年 | senolyticsとしてのGLS1阻害薬の効果を確認、老化細胞除去ワクチンの開発に成功 |
OpenAIの「ChatGPT」やStability AIの「Stable Diffusion」を始めとする多くのAIの発展も凄まじいが、ここ数年で「不老不死」に関する話題も豊富になってきた。
これは ひょっとすると人生300年時代も夢じゃない!?
2018年からの研究状況を再度調べてみよう。
老化しない生物「ベニクラゲ」と「ハダカデバネズミ」
1990年代にイタリアでベニクラゲ(チチュウカイベニクラゲ(Turritopsis dohrnii))が「不老不死の能力を持つクラゲ」と発表された。
また2018年に、カリフォルニア・ライフ・カンパニー(California Life Company:グーグルが15億ドルの投資をした老化研究所・通称「カリコ」)が、ハダカデバネズミがが「老化しないこと」で30年という長寿を保っていると発表した。
カリコのミッションは、老化研究の「ベル研究所」を作ること。
これらの生物研究により不老不死は難しくても、人類が「200年」「300年」生きるためのメカニズムが見つかるかもしれない。
「ベニクラゲ」に関して
「PNAS(2022年8月29日付)」に掲載された研究によれば、ベニクラゲの体には、遺伝子の修復と保護を担う遺伝子が近縁種の2倍もあるほか、テロメアが短くなることを防ぐ機能も備わっていることが分かったそうだ。
既に、2022年12月26日に東京電機大学、かずさDNA研究所、ベニクラゲ再生生物学体験研究所と共同でゲノムを解読したことを発表している。
「ベニクラゲ」に関しては前回のブログでも紹介したので割愛するが、次の5年間のうちに何か進展がありそうな状況だ。
「ハダカデバネズミ」に関して
最高齢のメスのハダカデバネズミはなんと閉経をせず、出産能力を失っておらず、
「年齢が上がるにつれて死に至る」
という性質を持っていない哺乳類はこれが初めて!と言われている。
さらに、ハダカデバネズミはがんに耐性があり、人工的にがんを誘発させてもがんになりにくい。
CalicoはGoogleによって作られた研究所だが、秘密裏に研究が進んでいるので情報が明らかになるのは、まだ数年かかりそうだ。
その他の長寿生物に関して
例えば、オルムと呼ばれるサンショウウオは、地中の洞窟の中を100年近くものたうちまわる。
また2022年12月、アフリカ西海岸沖に浮かぶ島、セントヘレナ島に住むセイシェルゾウガメのジョナサンの190歳を祝う誕生パーティーが行われた。
魚類、爬虫類、両生類などの外温動物は長寿記録で圧倒的な存在感を示している生物もいる。
簡単にまとめてみた。
順位 | 最高寿命 | 名前 |
---|---|---|
第1位 | 無限 | ベニクラゲ |
第2位 | 約1500年 | 海綿動物 |
第3位 | 507年 | アイスランド貝(平均寿命400年以上) |
第4位 | 約200年 | ウニ |
第5位 | 250年 | ハオリムシ(チューブワーム)(平均約170年) |
第6位 | 226年 | コイ(平均寿命約70年) |
第7位 | 211年以上 | ホッキョククジラ(平均寿命約70年) |
第8位 | 191年 | ゾウガメ(ガラパゴスゾウガメ・セイシェルゾウガメ)(平均寿命約100年) |
第9位 | 約160年 | ミル貝の一種ダイダック |
第10位 | 約100年 | ムカシトカゲ(平均寿命約100年) |
これらの生物の研究がさらに進めば、不老不死に一歩進むことになりそうだ。
遺伝子・酵素研究「サーチュイン遺伝子」と「グルタミン代謝酵素」
細胞はさまざまなストレスを受けると、不可逆的な増殖停止を示す老化細胞に誘導されることが知られている。
現代人は多くのストレスを抱えているので、とても危険。
長寿……だけでなくアンチエイジング効果があるとして並行して研究が進んでいる分野。
長寿遺伝子「サーチュイン遺伝子(SIR2)」に関して
脳の視床下部に多く存在する若返り遺伝子「サーチュイン遺伝子(SIR2)」は前回紹介した。
「サーチュイン」にはSIRT1〜7まで7種類あり、それぞれ異なる機能を持っている、。
サーチュイン | 局在 | 機能 |
---|---|---|
SIRT1 | 核・細胞質 | 代謝・炎症・寿命延長 |
SIRT2 | 細胞質 | 細胞周期・運動性・ミエリン形成 |
SIRT3 | ミトコンドリア | 脂肪酸酸化・抗酸化制御 |
SIRT4 | ミトコンドリア | インスリン分泌・脂肪酸酸化抑制 |
SIRT5 | ミトコンドリア | 尿素回路 |
SIRT6 | 核 | ゲノム安定性・代謝・寿命延長 |
SIRT7 | 核小体 | rDNA転写 |
2020年1月21日、慶應義塾大学が「サーチュイン遺伝子」を活性化させる抗老化候補物質として期待される「ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)」を安全にヒトに投与できることを明らかにした。
最近は安く買えるようにもなってきたが、「NMNは、末梢神経障害の軸索変性を悪化させる危険性を持っている可能性がある」と書かれた記事もみかけたので注意を。
「グルタミン代謝酵素(GLS1)」に関して
また、老化細胞の生存に必須な酵素「グルタミン代謝酵素(GLS1)」も注目されている。
2021年1月15日には、東京大学医科学研究所が正常な細胞と老化細胞にそれぞれGLS1の働きを阻害する薬剤を添加したところ、老化細胞だけが死滅することを発表した。
このような仕組みで、老化細胞だけを選択的に死滅させることができる。
現在、米国で「再発した頭頸部の悪性腫瘍」に対してGLS1阻害剤を「がんの治療薬」として使う治験が行われている。
おわりに
イギリスの計算機科学者「オーブリー・デ・グレイ」博士は、2009年にSENS(老化防止のための工学的戦略)とよばれる国際的な基金を創設し、ハーバード大学をはじめ、世界の名だたる研究機関と老化克服のための共同研究を進めている。
デグレイ博士は「老化の原因」を次のように7種類に分け「その一つ一つを潰していくことにより、老化、ひいては死を克服できる」と主張する。
- (1)再生不可能な、脳や心臓の細胞が死ぬこと。
- (2)細胞が正常に分裂せず、がん化してしまうこと。
- (3)死んだ細胞が毒素を出し、周囲に影響すること。
- (4)細胞が生み出す老廃物が、除去されずに細胞の中にたまってゆくこと。
- (5)細胞の中でエネルギーをつくるミトコンドリアのDNAが、傷ついたり突然変異して、正しく機能しなくなること。
- (6)細胞と細胞をつなぐコラーゲンなどのたんぱく質が、加齢とともにしなやかさを失うこと。
- (7)新陳代謝によって生まれる老廃物が、細胞の外側にも付着すること。
……ただ、どれも今のところ解決していない。
今、注目が集まっているのは「セノリティクス」といわれる老化細胞除去薬で、世界で20社以上が新薬として開発中らしい。
さらに老化細胞を分解することで知られるダサニチブやケルセチンといった化合物の期待も高まっている。
はやくしろ!!
© ドラゴンボール/鳥山明/集英社
オメーに言われたくねーよ!負け犬が
© 銀魂/空知英秋/集英社
何も貢献してないのに、急かせてゴメン……
個人的には2050年頃には120歳まで寿命が伸びて、その後、2100年頃に人間とロボットとの融合が進んで行くんじゃないかな……。
その計画でないと僕が生きてない……。