我が家には掛け軸がまだまだ多く存在するそうだ。
今回は三行軸。
落款には「頼三樹三郎」という文字がある。
画より文字の方が筆跡調査も出来るため真贋が分かりやすい……気がしてる。
因みに「掛け軸ネタ」はアクセス数が少ない。
オークションを見る限り三行軸の真作で1万円〜2万円、贋作で1000円~5000円。
「なんでも鑑定団」でも何度か取り上げられている。贋作だったようだけど。
内容は、漢文の出来としてはあまり上手くない。
字のバランスも、上が空いているのに下が詰まっている。
一番気になるのは、「雪水」のところで「三樹醉人」という落款の部分が本文を邪魔している。
落款と本文で墨の色が違う。名前を後から書いている。
過去の調査結果は次の通り。
西郷隆盛の二行軸
富岡鉄斎の山水画
頼三樹三郎(らいみきさぶろう)とは何者か?
頼 三樹三郎は、文政8年(1825)京都生まれの儒学者。
京都で尊皇の士 梁川星巌・梅田雲浜らと交わり、尊王攘夷運動に奔走。
条約勅許問題や将軍継嗣問題がもとで安政6年(1859)、安政の大獄にて吉田松󠄁陰などと共に斬首となる。
© 角川文庫『漫画版 日本の歴史』11巻
享年35歳。
名(諱)は醇、字は子厚・子春。
通称は三樹三郎ほか三木八・三樹八郎とも称した(いずれも出生地の京都三本木にちなむ)。
号は鴨崖・古狂生など。
父親は儒学者の頼山陽(1780-1832)で広島県出身。三樹三郎は名前どおり三男。
頼山陽と言えば仁保島村の元庄屋である渡部家の大銀杏の木を詠んだ漢詩を残している。
分流野水状チYチ爲ス 中二漁村有街巷斜ナリ 茅舎荻籬物色シ難シ 一株ノ銀杏是レ君ガ家
掛け軸を読む
掛け軸には通常
- 付属品(共箱、鑑題箱(識箱・極箱)、合箱)
がある。
また掛け軸自体には
- 引首印・冠帽印(関防印)
- 署名
- 落款(氏名印、雅号印)
- 遊印
などが書かれており、そこから作者を特定でき真贋も判断可能になる。
付属品を確認する
この掛け軸には「合箱」がついていた。
落款も署名もない。
毛筆を真作と比較
掛け軸には次の言葉が書いてある。
春雨霧に三日連山房書敲
擁食時清愁◯少准◯會
又興梅花別一年
まずはネット上で真作と書かれている掛け軸と比較してみる。
うーん……真作同士の筆跡も似てない部分があり よく分からない。
ただ、我が家の掛け軸には署名がない。この時点で非常に怪しい。
また全体的に字のバランスが悪くて非常に窮屈な印象を受ける。
氏名印、雅号印の落款を真作と比較
必携落款字典には該当の落款が掲載されてなかった。
仕方ないのでネット上で真作と書かれている掛け軸と比較してみる。
オレンジで囲んだ部分は真作と「太さ」が異なっている。
もっと上手に真似たら良いのに……という感じだけど真作同士も多少異なってるので、何が正しいか分からない。
おわりに
今回は掛け軸そのものの質が良くなった。
- 冠帽印がない
- 署名がない
- 合箱
- 字のバランスが悪く窮屈
- 筆跡からは判断できない
- 氏名印、雅号印は一致しないように見える
真贋はイマイチ決め手にかけるが、冠帽印と署名がなく氏名印、雅号印が付いているだけの時点で、贋作としてもヤル気を感じられない。